感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。観光・旅行業界では早い段階から深刻な影響が出ており、すでに職を失った人も少なくありません。 　温泉旅館で仲居として働いていた井坂明恵さん（仮名・35歳／無職）も宿泊客の激減に伴い、事実上の解雇を告げられたとか。 「1年更新の契約社員だったのですが、2月末に『今の状況では更新できない』と言われました。 　勤めていた旅館は、アジア系の外国人ツアー客が多かったのですが2月上旬以降はすべてキャンセルとなり、半年先まで埋まっていた予約もすべて白紙になったと聞いています。 　日本人のお客さんも来なくなり、正確な数はわかりませんが2～3月は昨年の同時期と比べて8～9割は減っていたと思います」 　そのため、雇い止めの可能性があることも覚悟しており、驚きはなかったそうです。 「このまま働き続けて正社員に、と青写真を描いていたのですが、それもすべてパーになってしまいました。 　ただし、それ以上に大変なのは住み込みで働いていたため、寮を出ていかなければならないことです。こういう状況なのですぐに追い出されることはなかったですが、それでも4月中には出ていかなければいけないんです。 　ただ、次の仕事を探しているのですが、今のところはまだ決まっていません。同じように仕事を失った方や出勤日を減らされた方からの応募が殺到しているみたいで……」 　両親に頼ろうにも児童養護施設育ちで天涯孤独。元夫は酒乱でギャンブル狂が原因で別れたので頼る以前の問題で、毎月3万円の約束だった養育費も最初の4か月しか振り込まれなかったといいます。 「4歳の娘がいるのですが、旅館のときは地域の託児施設に預けることができ、その費用もある程度負担してくれていたのですが、これからはそこも含めて自分でなんとかしなければなりません。 　その費用を自分で負担するとなると、生活していけるか不安で。娘のことを守らなきゃとは思いますが、正直どうすればいいんだろうって途方に暮れることもあります」 　しかし、そんな明恵さんにも心強い味方がいます。1年前から付き合っている6歳年上の彼氏です。 「同じ旅館で働いていた料理人です。『俺が2人の面倒を見るから』と言ってくれてましたが、カレも3月末で職を失ってしまいました。 　すごくうれしかったですけど、飲食店も休業やつぶれるところが出始めていますし、料理人の方でも新しい働き口を見つけるのは難しくなっていると聞きます。このまま再婚できればいいなとは思っていましたが、今の状況で一方的に頼るわけにはいきません」