そんな彼に子犬みたいにまとわりつく唯は、黒島結菜。棒のように細い手足をむき出して戦場を駆け回る。足軽・唯之助と男のフリをしてもみんな騙(だま)されてしまうような少年のような雰囲気もあって、常に全力で叫び動き回る。
イケメンにまとわりつくちょっとドジだけど明るい女の子はともすれば「うざい」存在として、視聴者の嫉妬を買いかねないが、黒島結菜はみごとに回避する。足の速さに秀(ひい)でていて、その点では自立しているし、少年ぽさがあって、若干ブロマンスふうにも見えなくもないからか。
野山をいつも全力で走り、泥塗れになって頑張っている姿も好感が持てるのである。ドラマのファンは「アシガールラバーズ」と呼ばれた。
主演2人が朝ドラ「スカーレット」に出演にファンが大喜び
愛される黒島結菜と健太郎の唯之助×若君コンビによる連続ドラマは全12回だったが、好評につき、1年後の18年、スペシャルドラマも作られた。
さらに朝ドラ「スカーレット」にふたりが出演する(2作共、プロデューサーが同じだったからというサプライズ出演であったらしい)ことになったとき、ファンは大喜び。残念ながら、ふたりの共演はなかったのだが……。私も、黒島結菜演じる女性が未来から伊藤健太郎演じる白血病の青年を助ける薬をもってやってくる展開を妄想したものである。
だからこそ、再放送がアナウンスされたときは飛び上がった。
ラブストーリー展開は「恋はつづくよどこまでも」に通じる
“好き”に溢(あふ)れ、抑えきれない衝動に身悶えする、恋のはじまり。誰もが一度は経験ある甘酸っぱさを味わえる“ふたり”を応援したくなる“。この感じ、大ヒットしている恋愛ドラマ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)にも通じるように思う。
「恋つづ」は「魔王」こと佐藤健が若君より恋の手練ではあるが、憧れの王子様に未熟な女の子の頑張りで振り向いてもらう展開は近い。
やっぱりこういうラブストーリーって人生に必要だと思う。コロナウイルス感染予防で濃厚接触できないいま、おこもりしながら、最高の濃厚接触・戦国の恋に浸りたい。
<文/木俣冬>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『
みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:
@kamitonami