NHK『舞いあがれ!』赤楚衛二演じる貴司の“滋味深さ”。丁寧な言葉選びがすばらしい
今期の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合、月曜日〜土曜日午前8時放送)はとにかく滋味深い。その滋味深さの理由はどこにあるのか?
ヒロインである岩倉舞(福原遥)は、空の世界に舞い上がろうと日々奮闘するが、一方で幼なじみの梅津貴司(赤楚衛二)もまた「ほんまの自分のまま生きていける場所」を探してもがく。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、絶妙な掛け合い(コールアンドレスポンス)で“言葉選び”をする貴司&衛二を読み解く。
赤楚衛二は、NHKの朝ドラに出演しても話題になる。彼が演じる梅津貴司のキャラクター性、そのキャラならではの実感がこもった“言葉選び”が視聴者の心に深く浸透してくる。
不思議と心に溶け込む貴司の言葉がネット上で大きく話題になったのはまず第5週のことだった。彼が書き留めた「干からびた犬」というワードセンス。文学を志す貴司らしい言葉の迫力は、彼が生まれながらの詩人であることを物語っていた。
日常の中で苦悩する貴司の言葉選びを、等身大の感情として表現する赤楚衛二は、身も心も貴司とともにある。まさに貴司&衛二によるコールアンドレスポンス。ヒロイン岩倉舞(福原遥)のメインストーリーと並行して描かれるふたりのサイドストーリーがメインにすらなったのが、第7週のことである。
ヒロインである岩倉舞(福原遥)は、空の世界に舞い上がろうと日々奮闘するが、一方で幼なじみの梅津貴司(赤楚衛二)もまた「ほんまの自分のまま生きていける場所」を探してもがく。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、絶妙な掛け合い(コールアンドレスポンス)で“言葉選び”をする貴司&衛二を読み解く。
貴司&衛二によるコールアンドレスポンス
海に向き合う心境
貴司がメインに描かれたこの週、彼の姿は海にあった。 海のほうへやる視線。海をまっすぐ見つめるわけではなく、身体を斜に構えて海に対している。会社を辞めて五島に流れ着くようにやってきた貴司はそうして海と自分を見つめようとする。 貴司が音信不通になって、東大阪の実家では大騒ぎである。母の雪乃(くわばたりえ)は気が気でない。電話が繋がらず全員が彼の無事を祈っていたところ、舞にだけ電話が掛かってくる。貴司は、昔舞からもらった五島の灯台の絵葉書を思い出したという。舞は幼なじみの望月久留美(山下美月)とともに五島へ。 夕日の灯台。長い階段を駆け上がった先に貴司はいた。駆けつけてきた親友たちを前に、静かに顔を上げた彼は「元気だった」と声を発する。久留美にどうしていたのか聞かれた彼は、手すりにうなだれるように海に向き合う自分の心境をこんなふうに語りだした。 「近くから遠くへどんどん青色が濃くなるのを見てた。海の果てまで見てたら、そっか空がはじまってた。無限の青やで」


