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思い出のローカル線で墓参りに行くはずが「もう一生できなくなった」意外なワケとは?

かつて全国に網の目のように張り巡らされていた鉄道網。しかし、車社会の地方では利用客は限られ、採算性などの問題から次々と廃止。 国土交通省の調べによると、2000年以降だけでも45路線が消え、今年3月にも北海道のJR留萌(るもい)線の一部区間が廃止となりました。 時代の流れなのかもしれませんが、こうしたローカル線が地方が次々と消えるのはさびしいもの。鉄道ファンでなくとも亡くなる前に記念に乗っておこうと思う方も少なくないようです。
北海道のローカル線(筆者撮影)

以下、画像はイメージです(筆者撮影)

廃止直前のローカル線に乗って祖父母の墓参りに行こうとしたが……

札幌在住の主婦・伊藤春香さん(仮名・34歳)も20年春、廃止が決まっていたJR札沼線の北海道医療大学駅~新十津川(しんとつかわ)駅を乗ろうと計画しました。 廃止前は総距離105.4キロの路線で、現在も運行中の区間は札幌近郊の通勤・通学として利用客も多いですが、廃止された区間は利用客のほとんどは鉄道ファンという状態。なかでも終点の新十津川駅は16年春以降は1日の発着本数がわずか1本ずつで、“日本一終電の早い駅”として有名でした。
新十津川駅(筆者撮影)

新十津川駅(筆者撮影)

彼女は祖父母が住んでいたのは、終点の新十津川駅の近く。昔はもっと本数も多かったそうで、子供のころは年に数回、列車に揺られて遊びに行くのが家族の恒例行事になっていました。 「大の鉄道好きだった兄に家族全員がつき合わされていただけです。当時は車のほうが早いのに……って思ってたので(笑)。それでも車窓から見えた田園風景や冬の雪景色は今も覚えてます。ただ、中学生になってからはまったく乗ることがなかったし、たまに行ったとしても車。だから、本当は廃止になる前に乗りたかったんです」 ちなみに当初発表されていた列車の運行最終日は5月6日。そのため、ゴールデンウィーク中に出かける予定を立てていたとか。 「毎年、今くらいの季節に祖父母の墓参りをしてたからちょうどいいかなって。当時は新型コロナで世間は外出自粛の空気になっていましたが子供もいなかったし、夫は長期の出張でずっと道外。私はコロナ前から在宅ワークだったから大丈夫かなと思ったんです」

緊急事態宣言が発令されたため、予定を前倒しにして運行を終了

ところが、4月15日になってJR北海道が札沼線(さっしょうせん)の廃止予定区間の運行最終日を17日に前倒しにすると発表。しかも、春香さんがそのことを知ったのは17日の夕方で、すでに最後の列車が出た後でした。 「テレビを点けたら地元の情報番組で『今日でラストラン』って取り上げられてたから驚いちゃって。ただ、政府の緊急事態宣言を受けての対応だったらしいので仕方ないのは重々承知しています。 それにどのみち16日も17日も家で仕事でしたし、発表当日に前倒しの件を知ったところで行くことはできなかったでしょうし……」
新十津川駅(筆者撮影)

新十津川駅(筆者撮影)

 でも、乗る機会を一生失ってしまったのも事実。しかも、理由が理由だけに誰かに怒りをぶつけることもできません。おかげでそれから数日間は心に穴が開いたような気分だったといいます。 「廃止の話なんてかなり前からありましたし、札幌からなら半日で行って戻って来れたのに……。別に墓参りなんか口実にしなくてもその気になれば乗るチャンスなんていくらでもあったんですよね。 正直、鉄道に対しては今も全然興味がないし、旅行とかでもマイカーやレンタカー派ですけど、そんな私にとって唯一思い入れがあったのがあの路線なんです。もっと辛い思いをしている人がたくさんいるから私に文句を言う資格はないかもしれませんが、『コロナのバカヤロー!』って叫びたくなる思いでした」
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実は、廃止になる2年前にも乗るチャンスはあったけど……
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