笑点レギュラー・桂宮治は元俳優志望だった!?「落語人生は妻のおかげ」と語る理由は
2022年1月に人気演芸番組『笑点』のレギュラーメンバーに抜擢された桂宮治。
芸風や落語家としての経歴から、「明るい道ばかり歩んできた人」と見られがちな反面、実はまったくの逆とのこと。「人嫌い」といっても過言ではないと語ります。
たくさんの人との出会いに助けられ、落語の世界に導かれて、なんとかかんとかガムシャラに生きてきたと語る噺家の人生とは。
(本記事は『噺家 人嫌い』より抜粋・構成しています)
バイトと遊びに明け暮れた高校時代でしたが、小学生のころに思い描いた「舞台に立つ」という夢は忘れませんでした。時間のあるときは下北沢の本多劇場に学生割引で入り、劇場内の階段の上に敷いたクッションに座って観劇していました。
「俳優で誰が好きか」と聞かれたら、高校時代の僕は加藤健一さんって即答していました。
最初はたまたま「面白そうだな」と思って加藤健一事務所の舞台を見たのですが、とにかく楽しかった。角野卓三さんと共演した、イギリスの劇作家レイ・クーニーの『パパ、I LOVE YOU!』が好きでしたね。連日満席の大人気公演でした。フランツ・カフカの『審判』で加藤さんが二時間以上も一人芝居するのを観たときは圧倒されました。
高校を卒業したら、俳優養成所に進むつもりだったので、本命の加藤健一事務所のオーディションを受けることにしていました。しかしオーディションを間近に控えた高校三年の冬、なんとバイクで事故ってしまい、緊急入院したんです。
オーディションを受ける代わりに全身麻酔をして手術を受けました……というオチです(笑)。
病院までお見舞いに来てくれた担任の先生に、「どうした?」と聞かれましたが、バイクは校則で禁止だったので、「バイクで事故りました」とは言えず、「階段から落ちました」と。先生は苦笑い。もうバレバレですわ(汗)。ちなみに、そのときの傷はいまも鎖骨あたりに残っています。
加藤健一事務所のオーディションは年に一度しかなかったので、このままだといわゆる「プー太郎」になってしまう。「一年も棒に振るのは嫌だ」と別の俳優養成所を探した結果、加藤健一事務所でよく演出を担当していた星充さん(故人)の養成所に入りました。「加藤健一さんに少しでも近いところにいられれば」という思いもありましたが、結局、ご本人には会えませんでした。
実は落語家になってから仲良くなった劇団「花組芝居」の舞台に立ったときに加藤健一さんがたまたま見に来られていて、ご挨拶したことがあります。「高校時代からのファンです」と、積年の思いを伝えられてうれしかったです。