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アソコにパワーストーンを入れる“子宮女子”が増殖中!危険じゃないの?

 水面下で増殖している「子宮女子」をご存知でしょうか。  自らの子宮を自己実現のツールとして高尚に扱う彼女たちは、ブログやイベントなどで日々活動しています。子宮女子のカリスマ的存在である「子宮委員長はる」さんのセミナーは盛況で、著書まで刊行されます(『子宮委員長はるの子宮委員会』KADOKAWA/中経出版、9月18日刊行予定)。 子宮委員長表紙 必ずしも子宮をセックスと結びつけるのではなく、子宮をとおして自分自身を探求する――。子宮を「宇宙」とたとえるのも、子宮女子の特徴です。  セックス=ふたり宇宙。  オナニー=ひとり宇宙。  なかなかうまい表現ではないですか。エロはコスモというわけです。そこには淫靡な響きも後ろめたさも何もありません。「私、昨夜“ひとり宇宙”しちゃった」なんて、朝活しながらさわやかに言い合いそうです。  子宮女子の必須アイテムは、布ナプキン(宇宙の入口に化学繊維などあてられない)、ふんどし(自然素材だし通気性もバッチリ。宇宙の風通しもよさそう)、空気パンツ(ふんどしの別称。ノーパンとは違う)etc。スピリチュアルとエコの融合がうかがえます。

静かに広がっている「ジェムリンガ」

 さらに子宮女子の最終兵器があります。「ジェムリンガ」です。  ジェムリンガとは、パワーストーンを5個ほどつなぎ合わせたもの。全長8~12センチで、価格は2万~3万円弱。これを膣に入れておくのです。
ジェムリンガ

ジェムリンガ販売サイト(http://www.jemlinga.com/)より商品写真

 子宮委員長はるさんのブログから、ジェムリンガの概要をまとめてみました。 「天然石(鉱物)の両極に無添加純銀(パーツ)を電極として配置した、ホトに納めるヒーリングジュエリー。無添加純銀は電気、電波、熱を通しやすく、鉱物を挟むことによって浄化も必要がなくなる。その電気、電波、熱とはオーガズムや骨盤低筋の動きによって生じる刺激で、体の芯(随)を温め女性のトラブルの解決をサポートする。  女性の正しい代謝は、地球上で性を営む生命体のひとつとして、森羅万象とシンクロするのが理想的。男性が受け取るエネルギーの一部は、女性の普遍的なリズムと豊かな需要性から派生するもので、男性はそれを単独で作りだせない。故に、地球という天体の記憶や森羅万象を充分に身体に宿している女性性は、地球回帰によって活性して安定する」 (「子宮委員長はるの子宮委員会」公式ブログ 2015年4月23日を要約)  ちなみに、ホトとは女性器を指します(男性器はホコ)。上記ブログを読むと、排泄や生理の時を除いて、なるべく長い時間入れておくもののようです。

医師に聞くと「危ない!」と全否定

 私は医療従事者ではないので、ジェムリンガの善悪のジャッジはできませんし、するつもりもありません。でも単純に、「膣に長時間、異物を入れていいのか?」と疑問に思い、かつ若干の嫌悪感も湧いてきました。  膣圧を鍛えるために、膣に挿入する器具はいろいろありますが、“入れっぱなし”は推奨されていないはずです。プレイとしてヤルならまだしも。  膣に異物を長い時間入れて大丈夫なのか?そこで、デリケートゾーンの診察・施術を数多く手掛けている高須クリニック・入谷英里医師(http://www.takasu.co.jp/)に聞いてみました。  ジェムリンガの写真や使い方情報を見て、入谷先生は開口一番こう言いました。 「これは本当に流行っているんですか? 恐ろしいですね……」  先生いわく「もともと膣は、異物を長時間入れておくようにはできていないのです」  膣内異物で一番心配なのは“細菌が増殖する”ことだといいます。 「人間の体内には様々な菌がいますが、異物が菌に餌を与えることになって、増殖してしまうことがあるのです。たとえば、タンポンによって黄色ブドウ球菌が大量に増殖して毒素を出す“トキシックショック症候群(TSS)。死亡例も多くありますし、2012年にはカリフォルニア在住の女性がTSSによって体のあちこちが壊疽を起こし、脚を切断する事態になったんですよ」  2012年の例では、その女性はタンポンメーカーを提訴しています。
TSSにより脚を切断したカリフォルニア在住の女性

タンポンによる感染症で片脚を切断したモデルのLauren Wasserさんは、膣内異物の危険性を訴えている(オンラインマガジン「VICE」2015年6月)

 でも、ジェムリンガのような鉱物や銀なら、細菌が繁殖しにくいのでは?と、さら突っ込んで聞いてみると、 「いえ、何であっても滅菌して、定期的に医師がチェックしなければ危険です。医療用シリコンを体内に入れる場合でも、そのぐらい丁寧に扱うのです。なのに、きちんと滅菌もせずに、素人が異物を膣内に留置するなんて……。  また、異物の摩擦を受け続けると、膣内の細胞が変性するので、どんな影響が出るかわかりませんよ」  つまり、ジェムリンガは医者の観点からしても危険? 「そう思います。危険性を伝えて、阻止しなければなりません」

開発・販売している須佐厳というおじさま

 見た目は可愛らしいジェムリンガ、しかし謎は深まるばかり。  ジェムリンガ開発者としてこの商品をネット上で販売し、各地で勉強会を開いているのは、須佐厳を名乗る男性(本名:田中数人)です。田中氏は、もともと株式会社ハウクラブという銀のアクセサリー会社を経営していました。
田中数人氏のFacebook

田中数人氏のFacebookより

 この須佐厳氏、自身のフェイスブックに興味深いことを書き連ねています。なんでも、ジェムリンガの存在を知った時から、もうお付き合いは始まっているのだそうです。 「(ジェムリンガを)どう受け止めるかって、その一瞬で、その女性の性がある程度わかってくるようになりました」。 「ジェムリンガをガン拒否する人の顔って、ものすごいもんね。トイレに坐ってるところで、いきなりドアをあけられて、用を足してるところを見られたみたいな顔をします」。  ここのくだり、ちょっと笑ってしまいました。案外愉快なおじさまですね。 「子宮女子になっちまえよ」とも書いています。  須佐巌さん、リュウズ(大きなジェムリンガ)セラピーやお話会なども開催し、愛用者を連れて神社参拝なども行っています。

前世の業が“カルマ粒”に……って子宮カルト?

 また、子宮女子のあいだでまことしやかに語られるのが、“膣や子宮や卵巣には抑圧された感情が溜まる”ということ。負の感情が強かったり、前世からの業が深い人ほど婦人科系の病気になる、とかいうわけです。  膣や子宮や卵巣に負やら業やらが溜まり、それを総称して「カルマ粒」と呼ぶらしいのです。 「ジェムリンガのおかげで、カルマ粒が出てきたの」と狂喜乱舞してブログ等で書いている子宮女子もいます。  カルマ粒とは血液の塊。生理の血液とはあきらかに違う、異形であり異臭がするものでしょう。“ジェムリンガのおかげ”なのか、“ジェムリンガのせい”なのか、私にはわかりません。  子宮委員長はるさんのブログは痛快だし、うなずける部分もあります。現に私も愛読者のひとり。  ○○に傾倒する○○女子。子宮に傾倒する子宮女子。何であれ、ひとりひとりの人生が好転するならいいのですが…。 <TEXT/森美樹> ●森美樹:1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)を上梓 https://twitter.com/morimikixxx
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