ぎぼむす、家政夫ナギサさん…“無名マンガ”原作でもヒットドラマに化けるワケ
多部未華子さん主演で現在放映されている『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)や、2020年の2月期に放映された『伝説のお母さん』(NHK)、そしてスペシャルドラマも大好評だった“ぎぼむす”こと『義母と娘のブルース』(TBS系)など、一般的には無名の漫画を原作としたドラマが目立ってきています。
一部では話題になっていたものの、誰もが知る作品ではないこれらの原作。それらがドラマとなって、高く評価される理由はどこにあるのでしょうか。
ちなみに、『私の家政夫ナギサさん』の原作(四ツ原フリコ著)は電子書籍配信サイト「コミックシーモア」内の連載、『伝説のお母さん』(かねもと著)は著者のブログから書籍化、『義母と娘のブルース』(桜沢鈴著)は漫画誌『主任がゆく!スペシャル』(ぶんか社)の連載でした。
「作品によるのでいくつか理由はありますが、まず第一は原作権の競争率が低いからでしょうね。人気作品は企画を出そうと問い合わせた段階ですでに別の媒体で制作が進行中ということがありますから」そう理由について話すのは、とあるドラマ制作会社の関係者Aさん。
現在、テレビドラマの多くが漫画や小説などの原作がある作品です。中でも大ヒットした漫画や、話題を呼んだ小説などは映像化のオファーがひっきりなし。超人気漫画家の作品は、連載開始直後に映像化の権利の確認がくるそうです。
「各所にアンテナを張って努力はしていますが、僕ら関係者が人気の作品の存在を知ってから企画を立てるのでは、もはや手遅れなんですよ」
特に狙い目なのが、紙媒体の雑誌ではなくWEB上で連載されているWEB漫画。
WEB漫画は知名度が低く、原作側も「どうぞぜひお願いします!」と前のめりで受け入れてくれるのだそうです。
一言にWEB漫画といえど玉石混交。なかにはアイデア勝負でストーリーに既視感があったり、映像化するとリアリティのない単純な展開のものもあります。しかし、「むしろそれでもかまわない」という関係者の声も。原作モノを多数手がける脚本家Bさんは言います。
「テーマとアイデアさえちゃんとあれば、十分なんです。WEB漫画は単純明快でアイデアが秀逸な分、オリジナル要素やエピソードを入れる“スキ”がたくさんあります。もちろん原作に敬意はあります。だからこそやりがいができるんですよ。なんとかしてドラマとして成功させて話題になって欲しいですから」
原作側も歓迎ムードゆえに、内容に口を出さないことも多いのだという。それもやりやすい秘訣だというAさん。また、こんなことも。
「原作モノをどう料理するかが脚本家の腕の見せ所だったりしますね。『アンナチュラル』や『MIU404』(ともにTBS系)の脚本家・野木亜紀子さんも、今はオリジナルが中心ですが、かつては原作モノで力を見せた方です。
出世作である『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)も、原作は大手出版社の作品ではありますが、さほど一般的に有名ではありませんでした。しかし、彼女の手で大ヒットに導いたドラマです」
原作を改変したり、オリジナル要素を入れた挙句にあまりにも駄作だと“改悪”だと言われ炎上することになりかねません。
しかし、ヒットすれば知名度や売り上げの点で原作にも還元されますし、ドラマというフォーマットに落とし込むための必要な作業であると考えれば、多少のアレンジは仕方ないのでしょうね。
人気作品は争奪戦。無名の漫画は狙い目
WEB漫画はスキが多くて、ドラマにしがいがある
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