子供はいらない女性、欲しい夫から離婚を切り出された胸の内
知り合って好きになって、その「好き」が絶好調に盛り上がって結婚。そんな大恋愛で結婚する場合、結婚後の青写真がまったくないというケースが多々ある。
好きだから一緒になりたい。その思いだけで突っ走ると、「日常生活」や「人生の計画」などを見落としてしまうことがあるのだ。
夫は子どもをほしがり、自身はいらないと思っていたという女性の話を聞いた。
「恋愛期間は1年くらい。特に短いわけでもなかった。ただ、その間、徐々に気持ちが盛り上がっていって、この人がいなければ生きていけないというような気持ちになっていきました」
そう話してくれたのは、カナコさん(仮名・37歳)だ。
33歳のころ、一生できる趣味をと音楽教室に通い始めた。そこで知り合ったのが2歳年下の彼、リョウタさん(仮名)だった。
「ふたりともチェロを習っていたんです。チェロに触るのも初めてという初心者クラス5人だったので、何度か通ううちにみんな親しくなって帰りに居酒屋に行く関係に。20代から40代、社会人ばかりで楽しかった」
彼が最年少、次に若いのがカナコさんだった。自宅の方向も同じだったため、ふたりはさらに親近感を覚えるように。
「1年ほどたったころ、彼がつきあってほしい、と。私は特に彼を男として意識していなかったんですが、音楽教室に通うきっかけがそれまでつきあっていた人と別れたことだった。しばらく恋などしたくないと思っていたんです。
でも彼に告白されて、ふっと思い起こすと、彼に会うのを楽しみに通い続けていた側面もあるな、と。友だちとしてつきあってきたけど、男女としてつきあうのも悪くないかもしれない。そう思いました」
彼女は彼に、恋人にフラれたから音楽教室に来たこと、自分がまた恋愛モードになれるかどうか自信はないこと、でもリョウタさんは信頼していることなどを率直に伝えた。
「彼は正直に話してくれてありがとうと言いました。『カナコさんがときどき、ふっと寂しそうな顔をすることがあったので気になっていた』って。そんなふうに私を見ていたのかとちょっと感激しましたね」
たがいの時間が許す限り、ふたりは会って話をし、映画を観て討論し、ドライブに出かけて自然に触れた。彼のことがわかっていくにつれ、彼女の中の恋愛モードはどんどんギアが上がっていくようになった。
「つきあうようになって1年近くたったころ、私、この人が本当に好きだと思って、自然と涙があふれてことがあるんです。一方で、好きすぎて怖かったし、幸せすぎて怯(おび)えていた。今、どちらかが急に死んだら、ただの恋人同士で終わってしまう。そんな恐怖感も抱きました。
そういう気持ちを素直に彼に伝えたら、彼は『オレも同じ気持ち。今すぐ結婚したい』と。ふたりで盛り上がってしまって、翌日にはお互いの両親に電話で報告、すぐに婚姻届も出しました」
そしてふたりは新居を探してすぐに引っ越した。友人たちへの報告が遅れて、ふたりともあきれられたくらいだった。それほどまでに「一緒になりたい、世間に認められた関係になりたい」一心だったのだという。カナコさん35歳の春だった。
