結婚で変わってしまった夫。「夫婦なんだから」と魔の言葉で妻をしばるように
何年つきあっても「相手のすべてがわかる」ことはあり得ない。同時に人は気持ちも考え方も移ろう生きもの。この先、相手も自分もどう変わるかは予想しようがないのかもしれない。
夫の変化を事前に察知できなかったために、現在、一つの選択肢として離婚も考えている女性に話を聞いた。

「彼とは3年つきあい、最後の半年は一緒に住み、これならやっていけると判断した上で32歳のときに結婚したんです」
アキエさん(36歳)はそう言う。相手は2歳年上、友だち主催の飲み会で知り合った。デートを重ねるうちにお互いに好きになっていったのだが、3年の間には危機もあった。
「彼の会社が倒産したのがいちばんの危機でしたね。『倒産するような会社に新卒で入ってしまったダメな僕』という感覚が彼に強くて、やたらと自分を卑下していました。どんなに励ましても、あなたのせいじゃないと言っても通用しなくて。あのときは私もつらくなって、恋人を励ますことさえできない自分に落ち込んだりもしました」
その話を彼にしてみた。彼を励ませない自分をダメだと思ってしまう、と。彼は「アキちゃんのせいじゃない」と言った。「だから会社が倒産したのも、あなたのせいじゃない」とアキエさんは言い返した。
「それでようやく彼は少しずつ立ち上がっていきました。この人にはちゃんと話せば伝わるんだとも思いましたね。あれが危機でもあったけど、ふたりの関係が強まったできごとかもしれません」
そうやってふたりはお互いを理解しあい、これなら結婚してからもうまくやっていけると納得したうえ結婚したのだ。
「ところが結婚してから、彼はほんの少しずつ変わっていきました。何かというと、『結婚したんだから』『夫婦なんだからさ』という言葉を連発するようになったんです」
たとえば彼女が仕事で忙しく、彼の実家に一緒に行けないことがあった。すると彼は「結婚したんだから、きみがオレの実家へ行くのは当然だろ」と言うわけだ。
「私の状況をわかってくれないので、あれ、と不思議な感じがしました。今は忙しくて無理だと言っても『夫婦なのに』と言われてしまう。
結婚したんだから、夫婦なんだから。そういう言葉にあなたが頼るとは思わなかったとイヤミを言ってみたら、『夫婦はお互いに忍耐して相手に寄り添う努力をしなくちゃいけないんじゃないの』って。正論ですけどね……」
正論を言っても始まらないのが日常生活でもある。

写真はイメージです(以下同じ)
3年つきあって納得の上、結婚したのに

※写真はイメージです