
「
うわ……、ちょっと臭くない?」
「
うん、これキツイね。私たちの制服とか髪にもニオイ付いちゃいそうじゃない?」
ロッカールームの奥の方からこんな会話が聞こえてくるではありませんか。
このロッカールームは、それぞれの制服やハイヒール、かばん、テキストなどをしまっておく個人のロッカーがズラッと並ぶだけではなく、入り口を開けてすぐにはテレビやパソコンが置かれ、食事をするためのスペースが所狭しと設けられていて、グラホだけではなく支店に配属された客室乗務員たちもここで身支度を整える共有スペースでもあったのです。
私以外にも数人いたグランドスタッフたちの会話はピタリと止まり、その続きに聞き耳を立てるのですが聞こえてきたのは声ではなく足音。

「あの、お食事中にすみません」
(あ、この人機内で見かけたことある。キレイだよなー)
ふたりの客室乗務員が意を決して話しかけてきます。
「
こんなこと本当に申し上げにくいのですがドアを開けたり、換気をしたりすることってできませんか? お食事のニオイが強くて、私たちのも制服も……。上司に叱られてしまいそうで……、ごめんなさい」
気を使った言葉選びとは反対に目が怒っているではありませんか。
でも分かります、これ逆の立場だったら同じことを思ってた。そもそもロッカールームはみんなのハイヒールや靴が置かれていていいニオイはしないんです。そのうえにんにくの強烈なニオイまでとなったら結構しんどい。ニオイうつりしないかどうか、気が気ではありませんよね。特に、狭い空間で働く客室乗務員のみなさんにとっては。