オラつき彼氏は、あくまでも看病ではなく、お家デートのノリで来たのでしょう。何なら仕事上がりの俺を癒してくれ、くらいのモードだったのかもしれません。

「家に到着すると、彼は看病してくれるかと思いきや『
コーラある? お菓子ないの?』『
もてなしが足りなくない?』と寝ている私のそばで文句を言い始めました。『私体調悪いんだけど』と言うと、
『呼ぶからには、大丈夫と思うでしょ』と逆ギレ。仕方ないから無理してお茶などを出すと、『元気そうじゃん』とニヤニヤしてセックスを求めてきました。さすがに断りましたし、その瞬間には『こいつ殺そうかな』って殺意が湧きました」
あまりの体調の悪さに、彼をどうやって帰らせたかすら思い出せないという恵美子さん。覚えているのは彼に対する“殺意”のみ。その後「こんな最低男は、私と同じような最低な気持ちにして捨ててやる」と決意したそうです。
この一件で完全に気持ちが冷めて、むしろ復讐心を抱くようになった恵美子さん。どうしたら今までされたムカつく行為への仕返しができるかと考え、彼の働くホストクラブに行くことを思いついたそうです。
「彼は数ヶ月に一度くらい、売上が足りないとぼやいていました。その時を狙い、私は彼指名でホストクラブに客として足を運びました。そして
飲食代を全額売掛金(ツケ)にして店を出るということを何回か繰り返しました。1回あたりの金額は4万円くらい。正直売上の足しになるとは思えなかったけど、彼の機嫌が良く、しめしめと思いました」

彼女が彼にしようとしたのは、“飛び”と呼ばれる売掛を踏み倒す行為です。もちろん無銭飲食は犯罪ですから、褒められたことではありません。しかしそれまで時間と労力とお金をかけてさんざん彼に尽くした彼女には、自分の気が済む方法がこれしかなかったのだそうです。
「
彼の店に通いながら、同時に私は引っ越しをしました。もちろん飛んだと同時に縁を切るためです。そうして30万円ほど売掛金が溜まったあたりで、計画を実行に移しました」
恵美子さんは携帯を解約せずに「別れよう」と一方的にメッセージを送信。すると彼から鬼電と多数のメッセージが入ったそうです。でも新しい住所がわかるような痕跡も残していなければ、2人の共通の知人もいなかったため、彼は足取りを追うことさえできません。少しして携帯も解約し、恵美子さんは彼氏と完全に縁を切りました。
「飲食代を払わないのは犯罪ですから、他の人には勧めませんし、自慢できないことという自覚はあります。ただ、彼が今まで私にしてきた事がいかにヒドいかをなんとしても分からせたくて。
でも少しだけ情けもかけたんですよ。売掛金は30万くらいですが、これなら彼が自分で頑張って補填(ほてん)できます。何十万円もする高いお酒を飲んじゃうことだってできましたが、それはしませんでした。最後の優しさも一応残したつもりです」
それ以来、彼女はオラオラ系の男には、二度と近づかないようにしているそうです。
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夫・彼氏を殺したいと思った瞬間―
<取材・文/しおえり真生、イラスト/カツオ>