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話題のうつ病マンガにも…“自称・心理カウンセラー”だらけの危ない現状 

 うつ病からの回復を描いたWEB漫画『パラダイムシフト』(EMI著)(書籍では『僕が僕であるためのパラダイムシフト』KADOKAWA)が最近SNSで大きな話題となっています。
EMI「僕が僕であるためのパラダイムシフト」KADOKAWA

EMI「僕が僕であるためのパラダイムシフト」KADOKAWA

 うつ病を患った1人の男性の、生きていく中での苦悩や、克服するまでの過程を描いた作品で、「うつ病を論理的に描いていてわかりやすい」「表現が現実的で勉強になった」など反響を呼んでいます。しかし、好評なのと同時に、疑問の声も…。

話題の漫画に登場する、高額な心理療法に疑問の声

 漫画の後半、主人公はある心理カウンセラーから心理療法を受け、みるみるうちに、心境や生活が前向きに変化していきます。そこからうつ病が回復に向かっていくのですが、その治療法について懐疑的な声があがっています。  漫画に登場する心理カウンセラーには実在のモデルがいますが、国家資格は持っていません。「心理カウンセラー」を名乗っているものの、その裏付けとなっているのは、自分が創設した団体です。独自療法であることに対して、読者からは「自称カウンセラーで大丈夫か」「民間療法でうつが治ったと描くのは危険では。本当に信頼性があるの?」といった声も。  漫画の著者が「回復した」と感じたのは事実でしょうが、他の人がうのみにしていいものか?       さらに、対面相談の費用が17万5千円と異常に高いことや、独自に作った資格のセミナービジネス(受講料1日10万円前後)をしていることにも、疑問の声があがっています。  とはいえ、このカウンセラーだけではなく、現在日本では様々な団体や個人が「カウンセラー」を名乗って民間療法を行っています。
面談、カウンセリング、診察

写真はイメージです(以下同じ)

心理学の資格がやたら多いカオスな状況、どう選ぶ?

 日本の心理学や相談援助に関する資格は、国家資格と民間資格があります。  民間資格、といっても日本学術会議に属する心理学関連の学会もあれば、日本学術会議から指定を受けていない団体、独自で発行している資格、セミナーや通信教育で資格講座を商品展開しているものなど、千差万別。自分で団体や資格を作って、その団体の代表を名乗って資格ビジネスをしているケースもあり、ありとあらゆる「自称カウンセラー」が跋扈(ばっこ)しているのです。  前出の漫画のモデルになったカウンセラーも、“心理ソリューション”を自ら創設し、テレビ出演や著書もたくさんあります。  このようなカオスな状況の中で、どのようにカウンセラーを選べばいいのか素人目からはなかなか区別ができません。そこで、アジア最大規模の依存症施設である榎本クリニックで長年依存症の臨床に携わっている、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳先生に話を聞きました。 「漫画を読んで、患者さんと1回会うだけで後は電話でカウンセリングをするという治療法で…しかも17万5千円という価格設定は何を根拠にしているかわかりませんがあまりにも高額だと思いました(笑)。ですが、基本的にカウンセラーを選ぶのはクライアント(カウンセリングを受ける人)ですから、クライアントの最善の利益になるかどうかは大切な基準なのです。  例えば、精神科に行って症状が改善しなかった人が、民間の心理療法でよくなるケースもあります。ただ、事前にカウンセラーの略歴を見て、どんな資格を持っているのか調べてから行くほうがハズレは少ないと思います」
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悪徳商法にハマってしまうことも
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