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急増するアジア系米国住民への差別や犯罪。在米日本人に聞く「今」

「声を出さない」アジア人から「声を挙げる」アジア人へ

 奥村さんは現在、中国系アメリカ人の夫と高校生の娘さんと一緒に暮らしています。二人ともアメリカ生まれ・アメリカ育ち。しかし、奥村さんが受けた差別的発言を話すと、それぞれ違う反応が返ってきたそうです。 「ちょうど『Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)』ムーブメントが全米に広がってきていた時期だったこともあって、娘たち若い世代は差別問題を悲観的にではなくポジティブにとらえていました。『私達の世代で変えていかなければいけないね』というように。  一方、夫は『またか』『そんなことよくあることだ』と、長く続く差別に辟易(へきえき)しているようなところがありました」  聞けば、ある世代より上のアジア系アメリカ人にとって、差別を受けることは当たり前のこと。差別的な言動を受けても「声を出すな」と幼い頃から両親に言われて育ってきた人が多く、理不尽なことが起きても静かに飲み込んできました。  非アジア系の人々の多様性教育が欠落していることから、アメリカで生まれ育ったアジア系アメリカ人がその見た目により“外国人”と思われ、心ない言葉を掛けられることもあるといいます。  また、アトランタの襲撃事件のようなことがあっても、「犯人はイライラしてやったと言っている。だからヘイトクライムではない」と警察が処理してしまい、例えアジア系住民が声を挙げても真剣に取り扱われないケースも多かったそう。  しかし今、若い世代を中心にアジア系住民の中にも「このままではいけない」という思いが強くなっているのを、奥村さんも感じているとか。

「これからに希望を」ストップ・アジアン・ヘイト!

 以前では考えられなかったことでしたが、週末には全米各地でアジア系住民へのヘイトクライムに対する抗議集会が行われるようになったといいます。 「うちの市でも今週末、抗議のデモ行進が行われる予定です。私も参加しますが、アトランタの事件を受けてアジア系の政治家やニュースキャスターも声を挙げ始めていますし、私達のコミュニティは確かに変わろうとしているんだなと感じます。そうした意味で私は、これからに希望を持っています」  アトランタの銃撃事件をきっかけに、ジョー・バイデン大統領も声明を発表。米メディアも、コロナ禍で溜まった人々のストレスが爆発し、アジア系住民がスケープゴートにされてしまっている現状を危険視する記事を多数投稿。  歌手のリアーナや女優のグウィネス・パルトロウ、バラク・オバマ元大統領などの著名人が抗議の声を挙げ、ナイキやケイト・スペイド、ヴァレンティノといったアパレルブランドが、SNSに「#StopAsianHate」(ストップ・アジアン・ヘイト)と投稿し、アジア系コミュニティーのサポートを表明しています。  Stop Asian Hate! アメリカで今起こっていることは、決して他人事ではありません。 Source:「CNN」「Asian American Bar Association of New York」 <文/橘エコ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
橘エコ
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。
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