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“隣のおばさん”に体を売った息子に「大人なめんなよ」と母。酒井若菜の壊れっぷりが見事|ドラマ『シジュウカラ』

「隣のおばさん」に体を売っていた過去と向き合う

 そして「隣のおばさん」に体を売っていた千秋は、自分の過去に自分がいちばん傷ついていたことをようやく自覚する。  売れ線を狙わずに自分が描きたい漫画を描けと忍に言われ、彼のペンに勢いがつく。自分の過去と向き合って、それを漫画にする覚悟ができたのだ。それは自分を開示することであり、いちばん隠しておきたいことを世にさらすことにつながる。それでも彼がそうせざるを得なかったのは、「忍と一緒になりたい」一心だった。一方で、忍はやはり息子に恥じない生き方をしたい思いが強まり、千秋に別れを告げる  興味深かったのは、忍が夫の洋平に「好きでもないのにどうして嫉妬したりセックスしたりしようとするの?」と尋ねるシーンだ。洋平は一瞬、言葉に詰まったあと、「おまえこそオレのこと好きじゃねえじゃねえかよ」と吐き捨てる。そしてふたりとも笑い出す。それは絶望的な乾いた笑いだった。もう、どうにもならない亀裂をようやくふたり一緒に見た瞬間だ

やさぐれた大人の中にも、いまだピュアな部分が

 話が煮詰まってきたこの2回、画面からはやさぐれた雰囲気、絶望、人がもつ抗いがたい痛みが立て続けにあふれてきた。だが一方で、人生に立ち向かう若い悠太、変えられない過去に向き合う千秋の様子が希望として描かれている。若いがゆえのピュアさが苦しいこともあるが、人生を積み重ねた大人の荒んだ諦観(ていかん)よりは心がなごむ。  そして見終わって思うのだ。荒んだ諦観ややさぐれた気持ちに苛まれる大人の中にも、いまだピュアな部分は残っているのではないか、と。そしてピュアな若さは、渦中にいるときはまた苦しいものでもあったことも思い出す。  人はいくつになっても悩み、苦しんでしまうものなのだろう。だが、それを認めない限り、何も始まらないのかもしれない。 【関連記事】⇒小さなトゲで妻を傷つける「今どきのモラハラ夫」。ベッドで妻から“意外な復讐”|ドラマ『シジュウカラ』 <文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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