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女優・黒沢あすかが抱いてきた苦しさ「50歳でかさぶたのように剥がれた」

 3月5日(土)より、渋谷・ユーロスペースを皮切りに全国順次公開される映画『親密な他人』で、神尾楓珠さんとW主演を務めている黒沢あすかさん。行方不明の一人息子の帰りを待つシングルマザー・恵(黒沢)と、ふとしたきっかけから彼女と暮らすようになった青年・雄二(神尾)の奇妙な関係とその顛末を描いた本作。昨年50歳を迎え、3人の息子を持つ母親としての顔も持つ彼女に、作品のテーマや子育て、そして更年期の乗り越え方などについて聞きました。 黒沢あすかさん

不穏だけどドラマティックな作品

――なかなか言葉にできない、作品全体を覆う不穏な雰囲気がとても印象的でした。演じられて一番何を感じましたか? 黒沢:出来上がった作品を見たとき、私も同じことを思いました。けれども、撮影している間はそういう気持ちを一切持ちませんでした。言い方は難しいですが、今、日本で起こっているオレオレ詐欺や新型コロナといった題材を扱うことで、どこかドラマティックな感じでもあるのかなと。 ――今回、演じられた恵という女性の心情についてはいかがでしょう。 黒沢:理解するというのは難しかったです。でも、同じ母親ということもあり、少しでも寄り添うことはできるのではないかと思いました。ただ、私自身、役に感情移入しやすいタイプなので、なるべく客観視するよう取り組んでましたね。私も家庭を持ち子どももいるので、恵という役に引き込まれてしまうと演じるどころではなくなってしまいますので。

自分のバックグラウンドが作品を掘り下げていく

映画『親密な他人』

映画『親密な他人』(3月5日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開)

――確かに完全に重ね合わせることは難しいですよね。 黒沢:私自身、妻の顔、母の顔、女優の顔を持つことで「黒沢あすか」としてカメラの前に立っていられると思っています。なので日々、誠実に自分を生きることが、すべてにつながるのではないかと。 ――見る側はこの作品をどう受け止めればよいでしょうか。 黒沢:いろいろなものを投げかけている作品だと思います。ですから、見てくださった方がどういった道を歩まれてきたか、今現在どういう生き方をされてきているのか、自分のバックグラウンドがどうこの作品を掘り下げていくのか――。これがドラマだったらたぶん答えをだしてくれると思いますが、この映画はそうではない。そして、映画というものはそういうものであると私は思います。

私はあくまでも子どもたちを産んだだけ

――ところで、お子さんは何人いらっしゃるのですか。 黒沢:3人の息子がいます。一番上が22歳で神尾さんとまったく同じなので、20代の男性との向き合い方については大丈夫だったと思います(笑)。 黒沢あすかさん――母と息子の関係について黒沢さんが思っていること、実践していることがあれば教えてください。 黒沢:まず、私はあくまでも子どもたちを産んだ、という意識だけ持つようにしています。 ――シンプルですね。 黒沢:私と息子は別ものですから、私たちが経験してきたことは押しつけない。それが良い経験だったとしても、こういうことがあったんだよ、という話し方をします。息子たちには考え方を含め、グローバルな生き方をしてほしいと思っていますが、礼儀作法だけは中学までにびっちり叩き込みました(笑)。でも、やっぱりどこかで疑っているというか、家を一歩でもでたら何をするかわからないと私は思っているので、基本、自分の息子が言うことを手放しで信用しないことにしていますし、話すときは目を見るようにしています。
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子役時代、父から言われた「バカヤロウ!」
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