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『ミステリと言う勿れ』伊藤沙莉、どんな役を演じても“絶対に嫌われない”魔法

「いるいるこういう子」と思わせる表現が秀逸

伊藤の魅力を語るのに欠かせないのは何より“親近感”ではないでしょうか。 その芝居の巧みさは、多くの作品で発揮されています。筆者の好きな伊藤出演作を挙げるなら、まずはドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。不妊治療に取り組む兄夫婦(松山ケンイチ・深田恭子)を横目に、できちゃった結婚をする妹・琴音の役でした。 良くも悪くも周りへの配慮がなく、若くして子どもを産むことになる等身大の母親。妊娠や出産・育児の愚痴を口にするさまは「おいおい…でも、こういう子いるよね」と憎めません。
ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)で演じた、主人公・晶(新垣結衣)と同じ職場で働く松任谷夢子もまたしかり。やる気がなく、責任のある仕事はするりと晶に押し付けます。ままならない現実をリアルに描いた本作に、伊藤が見事に軽妙さを加えていたのも印象的でした。 仕事はできなくてもムードメーカーとして場を和ませ……でも時々妙に説得力のある言葉を口にする。なんだか、自分の隣にもいそうな佇まいなのです。 伊藤が人気を集めるのは、その役のダメなところも受け止め、きちんと表現した上で、“憎めない”という天性の魅力を加えているからかもしれません。

伊藤沙莉の“引き算”が光る『ミステリと言う勿れ』

さて、今クールの『ミステリと言う勿れ』でも伊藤は新たな一面を見せてくれています。伊藤が演じる新人刑事・風呂光は、男社会の警察組織のなかでなめられまいと奮闘する役どころ。本作の伊藤は、事件関係者たちの感情のぶつかり合いや、主人公・整(菅田将暉)の語りの流れを邪魔しない抑えた芝居が光っています。 『あさイチ』(NHK総合)のプレミアムトークで「俳優のお芝居は引き算」と語った伊藤。いつもより感情表現を抑えた演技は、まさに引き算が効いています。ドラマの風呂光は原作と違い、整の相棒的な立ち位置(整との恋愛要素は不要ではないか…というのが個人的感想ですがそれはさておき)。最終回に向けて刑事として成長する様子を、見守りたいです。
バラエティでの自然体な彼女も、CMでの親しみやすい彼女も魅力的。でも、やはり俳優・伊藤沙莉の活躍が何より楽しみでなりません。『ミステリと言う勿れ』でも、この先の出演作でも欠かせない役者としてさまざまな顔を見せて欲しいと思います。 <文/鈴木まこと(tricle.llc)> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
鈴木まこと
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
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