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たけしの後の三谷幸喜に“大河ドラマの宣伝コント”より視聴者が期待することは?

大河ドラマの宣伝を「Nキャス」で毎回やる三谷幸喜

「Nキャス」における肩書きの謎はこれで解消(あくまで筆者の考えです)。それよりももっと世の視聴者が気にしているのは三谷幸喜の作り込んだ雰囲気であろう。 初回は安住紳一郎アナの最初の挨拶を自分で言ってしまい、第2回では安住と声を合わせて挨拶、そのつど安住にツッコまれる。それはまあよいとして、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の宣伝を毎回やる(この原稿を書いている時点で3回連続宣伝した)。 初回はおそらく宣伝すると思ったので自己紹介代わりとして受け止めたが、2回では放送の合間、CMやVTRの間、台本を書きたいと言って机を用意してもらい、3回ではコーヒーメーカーまで用意してもらっていた。さらに「鎌倉殿~」と同じ録音スタッフがいると紹介。そこまで来ると、大河ドラマ好きで三谷作品ファンの筆者でもちょっとトゥーマッチではないかと感じた。
(画像:三谷幸喜 Twitterより)

(画像:三谷幸喜 Twitterより)

ドラマの宣伝をしたい気持ちは当然だと思う。おそらく「Nキャス」レギュラーになったのもその気持ちもあったのではないかと推測する。だが「Nキャス」の視聴者が全員大河ドラマに興味があるかといえばそうではないだろう。 例えば、NHKでは朝ドラの前の「おはよう日本」で朝ドラ送り(朝ドラがはじまる前振りのような短いトーク)、後の「あさイチ」で朝ドラ受け(朝ドラを見た感想)をやることをおもしろく思わない視聴者もいて批判の声を局に寄せることがあるようだ。 無関係の番組で狙(ねら)ったように宣伝している内輪感覚を好まない人はいる。とはいえ、それがおもしろいときもあるもので。以前、朝ドラ「半分、青い。」(2018年度前期)の脚本家・北川悦吏子がTwitterで毎日のように自作の裏話をつぶやき、ときには「神回」とまで煽(あお)ることをうるさいと感じる者もいる一方、そのおかげで朝ドラが盛り上がったことも確かなのである。なにごともほどほどが肝要(かんよう)だ。

かねてより自作の宣伝にひじょうに積極的な三谷幸喜

三谷幸喜に北川悦吏子、作家が自作を体を張って世に伝えようとする。これはこれで尊い行為である。 三谷も北川も90年代、テレビドラマが盛り上がっていた時代に人気作家として活躍していた同士、似た感覚があるのだろうか。三谷の代表作で大ヒットドラマ「古畑任三郎」シリーズがはじまったのが94年、北川の代表作「ロングバケーション」が放送されたのが96年、この頃のドラマは“脚本家の時代”であり、作家の魅力がドラマを観るモチベーションのひとつだった、いまの坂元裕二、古沢良太、野木亜紀子の人気の比ではないほど脚本家にカリスマ性があった。 三谷幸喜はいまだに現役で彼の脚本がブランドになっているからすごい。作風はまるで違うが、橋田壽賀子のような存在になっていただきたい。
「BRUTUS  ブルータス 2008年 6/15号 ザ・三谷幸喜アワー」マガジンハウス

「BRUTUS ブルータス 2008年 6/15号 ザ・三谷幸喜アワー」マガジンハウス

スター作家の稼働は宣伝に有効である。とりわけ三谷はかねてより自作の宣伝にひじょうに積極的で、例えば、自作自演の特番(15年、「ギャラクシー街道」公開時、「スター千一夜」の司会として俳優のインタビューを行った)や一冊まるごと三谷をフィーチャーした雑誌(08年、「ザ・マジックアワー」公開時、「ブルータス」が「ザ・三谷幸喜アワー」として「三谷幸喜失踪事件」というストーリー性のある雑誌をつくった)など、どれもとても凝(こ)ったもので、三谷自身がフル稼働していておもしろかった。本人がプレイヤーでもあるので、それが可能なのである。
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視聴者はわかりにくいことを三谷幸喜に期待しない
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