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工藤静香、現役感バリバリの歌声で圧倒。「歌の上手さ」の根本とは

歌声そのものがクリアに言葉を届ける

 また、歯切れのよいビート感を日本語の音で体現している点も見逃せないところです。  独特な発声や発音がモノマネされがちな彼女ですが、よく聞けば、そこにロックやソウルミュージックなどの洋楽を過剰に意識する様子はうかがえません。もしそんなことをしていたら、中島みゆきの歌詞は全く伝わらなかったでしょう(注:工藤静香のヒット曲には「慟哭」や「FU-JI-TSU」「MUGO・ん…色っぽい」など中島みゆき作詞が多い)。  個性的な印象とは裏腹に、工藤静香は数々の名フレーズを正確に伝えてきました。<目と目で 通じ合う そうゆう仲になりたいわ>(「MUGO・ん…色っぽい」)、<黄砂に吹かれて きこえる歌は 忘れたくて 忘れた>(「黄砂に吹かれて」)などは、いまでもメロディと歌詞が鮮明に浮かんできます。 「FU-JI-TSU」に至っては、歌声そのものが整った活字みたいにクリアです。芝居がかった情感を強調するのではなく、言葉の持つリズムから音楽が生まれることを熟知しているかのような落ち着きっぷり。改めて驚かされます。

生まれながらのシンガーが持つ現役感バリバリの迫力

 FNSでのパフォーマンスも、その根っこの強さは不変でした。生まれながらのシンガーなのでしょう。  80、90年代のリバイバルブームの昨今ですが、工藤静香の歌は全く錆びついていません。現役感バリバリの迫力に圧倒されました。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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