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杉野遥亮の演技にいちいち感動。『ユニコーンに乗って』でみせた新たなフェーズ

視線に感じる新たなフェーズ

 杉野遥亮の演技の特徴は、基本的に相手に密着型であることだ。相手の反応を伺いながらそれに素直に反応してみせる。これは以前、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系、2021年)で杉野が演じたヤンキー役に対して筆者が“ミラーリングの演技”だと指摘したことがある。今回の功役は、確かに同じ系譜のミラーリングであるのだけれど、そこからさらに一歩踏み込んでいる。  特に気になるのは、視線のわずかなゆれである。相手に照準を合わせながら、何か彼だけの世界を想像させるような視線のふるえを感じる。それでいて全体の印象として、相手をまじまじみつめる長身の姿がピタリと画面におさまる。なんだろう、この独特な存在感。彼が俳優としての新たなフェーズに入ったことを感じさせはしないか。

西島秀俊との絶妙なコントラスト

 杉野がここまではっきりと存在感を示し、画面上に浮き上がった作品は本作がはじめてではないだろうか。これには、最年長社員・小鳥智志を演じる西島秀俊の存在が一役買っている。功と小鳥が絶妙なコントラストとバランスを保つのだ。  第1話終盤で、図書館で勉強する佐奈と小鳥が歓談しているところへ功がやってくる。功の前髪が走ってきた風でかきわけられる若々しい印象。気づいて立ち上がる小鳥の律儀な振る舞い。西島さんのこの誠実キャラの機敏な動きも素晴らしい。小鳥が深く会釈すると、今度はそれを受けた功がなんとも言えない表情を浮かべる。  相手に密着するところは徹底的に密着し、受けとめる瞬間にはしっかり受ける。このメリハリが杉野の芝居をひときわ面白くする。西島秀俊の存在によってそれが引き立てられているのである。
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軽やかな禁じ手を使った功
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