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『初恋の悪魔』は“1話ごとにスッキリ”しないのが醍醐味!分かりやすさより大切なこと

気づけば全員が愛おしくてたまらなくなる“坂元ワールド”

トレンディドラマの火付け役『東京ラブストーリー』、王道系の月9『ラストクリスマス』『トップキャスター』時代を経て、社会問題を扱う『Mother』『それでも、生きてゆく』等を生み出した脚本家・坂元。近年では、生きづらい現代の群像劇・人間ドラマ『最高の離婚』『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』等で、多くのドラマファンを魅了してきました。筆者も坂元作品は大好きで、何度も見返した作品が山のようにあります。
TBS『カルテット』

(画像:TBS『カルテット』公式サイトより)

最近の坂元の脚本は、分かりやすさに重きを置いていないと感じます。1話ごとにはすっきりしない、第1話だけでは何が描きたいのかよく分からない……じわじわくるのです。作品全体を通して観て、初めてメッセージが伝わる。そんな、ちょっと難解な文芸作品のようなドラマだと感じます。 全話を通してキャラクターを深堀りするため、最初はイヤな奴と思っていても最後には共感したり、気づけば全員が愛おしくてたまらなくなったり。回を追うごとに、事件や物語の展開がどうなるかはもちろん……登場人物たちの未来が気になって、心配になって、寄り添いたくなってたまらないのです。それは、坂元が“人間の哀しみ”を描くのがとにかく上手いからかも知れません。その哀しみこそ、生きづらいと感じる私たち視聴者の心に共感を呼ぶのではないでしょうか。

宝物のような『初恋の悪魔』の台詞たち

坂元裕二節とも言われ、名言が多いのも坂元作品の特徴です。もちろん『初恋の悪魔』でもそれは健在。挙げればキリがありませんが、個人的に好きな台詞をいくつかご紹介! 「僕の理由は『その他』なんですね」(第1話・アンケートに答える鹿浜) 「平凡な人を平凡だと思わない人が現れる。異常な人を異常だと思わない人が現れる。それが、人と人との出会いの美しいところなんじゃないの?」(第3話・摘木) 「世の中は美しいものではないけれど、自分自身を醜くしてはいけないよ」(第5話・椿静枝※鹿浜が心を開いていた老婆) こうした私たちの心に残る宝物のような台詞が生み出されるのは、坂元氏が物事をさまざまな角度から観て、本質を追求しようとする姿勢の表れではないでしょうか。まさに“マーヤーのヴェール”を剥ぎ取っている!(“マーヤーのヴェール”とは、第1話で鹿浜が説明した「現実に囚われていると本質が見えなくなる」というインド宗教・哲学の概念。劇中で事件を解明しようとする際に放たれる決め台詞)。 ひとつの価値観、狭い視野に囚われることなく、事件や人に向かい合う。そこから生まれる台詞の数々に、私たちは励まされているのかも知れません。 ======= 登場人物たちの素性が見えてきて、いよいよ物語は第2章に突入!最終回まで、坂元ワールドにどっぷりハマって“みぞみぞ”したいと思います。 <文/鈴木まこと(tricle.llc)> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
鈴木まこと
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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