筆者が有村架純の演技力に惹きつけられたのは、2017年の朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)でした。有村が演じたヒロイン・みね子は、朝ドラには珍しく何かを成し遂げるわけでもなく、有名な夫を支えたわけでもない人物。
平凡で、ただ一生懸命に日々を生きる女の子でした。

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これといった夢はなくとも、家族を大切にして、友人や職場の人たちを愛し愛される。いわば「普通の子」なのですが、有村の緻密な役作りと繊細な表現により、心から応援したくなるみね子に仕上がっていました。有村は“受け”の演技も上手く、主演ながらぐいぐい前に出るというより、相手を引き立てながら物語になじむのが上手!脚本・共演者の良さももちろんありますが、懸命に生きるみね子に会いたくて、癒されたくて、何度も観返した朝ドラのひとつです。
大ヒットした映画『花束みたいな恋をした』でも、その演技は健在。役の設定だけではなく、
豊かなのに主張し過ぎない有村の心情表現に、観る人は共感せずにはいられないのです。
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役の幅を広げた近年の“ちょっとクセのある女性”たち
ここで、普通の女の子を演じるのが上手い!に留まらない、有村の進化を垣間見た作品をふたつ紹介します。ひとつは
『前科者』(映画およびWOWOWドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』)。有村が演じたのは、元受刑者(森田剛ら)の更生を助ける保護司。生真面目で頑固者で、強い使命感をもって罪を犯した保護観察対象者に向き合う女性です。

(画像:映画『前科者』公式サイトより)
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そして、もうひとつは2021年のドラマ
『コントが始まる』(日本テレビ系)。こちらは、小さい頃から優等生で一流企業に就職するも挫折して、ファミレスでバイトをしながらお笑いトリオ(菅田将暉・仲野太賀・神木隆之介)を応援する女性を演じました。
いずれの役も過去に辛い経験をしており、そんな過去と葛藤する姿があったかと思えば、感情を爆発させるシーンがあり。
有村はそれぞれの過去の経験を本当に背負ってきたかのように、イマを表現。どちらも、演じ方によっては少し面倒な人に見えかねないクセのある役柄ではありましたが、役の背景を深く理解した表現で魅せてくれるからこそ、説得力があり憎めない、愛すべきキャラクターに昇華されています。私はどちらの作品でも、有村の涙を見て、同様に涙を流さずにはいられませんでした。