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りゅうちぇるの離婚に批判が集まるワケ。“らしさ”の押し付けに嘆くLGBTQ当事者たちの声

“理想の夫像”の前提にあるネガティブな側面

 ryuchellに対するこれまでの世間の反応について、Kotetsuさんはこのように語ります。 「ryuchellさんは自分がしたいと思っていることをやって発信していただけの話ですが、それを“理想の夫”とひとまとめにされることで、世間がイメージする理想の夫像がネガティブな側面も含めてすべて集約されてしまった気がします。  メディア側は丁寧に説明しなければなりません。ですが、読まれやすい記事を優先するために『夫』『男性』などとわかりやすい言葉を使い、本人の認識ではない側面が広まるのかなと。メディアの力によって、有毒なイメージが再生産されてしまったことが1つの要因として考えられます」  あるメディアではryuchellが家事や育児を積極的に行っていることに対して賞賛する記事が掲載されていました。このことは世間のもつ男性へのイメージ、つまり「男は働いて家族を養う」のような考えが前提にあり、本来多様であるべき「男性」という存在が、一つのあり方としてまとめられる懸念があるのです。

社会が押し付ける“有害な男らしさ”の存在

男らしさ

※イメージです

 働かずに家事を行う男性、家事が苦手な男性など、さまざまな人が存在しているため、あくまで「個人」として認識することが、多様化する社会では求められます。さらに、自分らしく生きている人でも社会の理想とする男性像・女性像に影響されることもあるのだとか。 「ryuchellさんがインスタグラムで綴っていた『夫らしくいなければならない』『“夫”であることは正真正銘の“男”でないといけない』という文は、公で多様性を訴えて活動している人でさえ、この社会が押し付ける“有害な男らしさ(社会や男性自身に害を及ぼすような文化的な男らしさの基準)”に影響を受け続けていることが伝わります」 「男は稼がなければならない」「男はたくましくあるべき」など、世間のもつ男らしさの基準はいまだに存在します。それを設定することで、当てはまらない男性が自分らしさを抑えてしまうこともあるのです。そういった基準をジェンダー等をめぐる議論でしばしば「有害な男らしさ」と表現しますが、社会にある前提を疑うためにはどうすればよいのでしょうか。 「他者を批判して自分のことを守った気になっているかもしれませんが、それは同時に、自分を窮屈にしているのです。なので、この有害な男らしさを解体していくためには、さまざまな人がいることを知り、ジェンダーやセクシュアリティ、その背景にある社会的問題などの知識をつけていく必要があります。  また100%受け入れる必要はなく、そういう人もいるんだと存在を否定しないスタンスが求められます。2人で話し合いを重ねた結果なので、今後も素敵なパートナーシップを築いていくと思いますし、第三者はそれを1つの家族の形として受け入れることが大事なのです」

「もし大切な人がそうだったら?」と想像してみる

 ryuchellは9月24日、離婚公表後、初めて自身のYouTubeチャンネルで動画をアップ。 「夫妻ではなくなったんですけど、家族としての愛はしっかり守っていく覚悟で、新たなスタートを切って進んでいこうと思います。今後は自分の心の声に耳をかたむけながら、まわりも大切にしながら、一つひとつ丁寧にまい進してまいりたいと思っています」と心境を語りました。  今回のニュースにより、今まで表で語られづらく、しかし確かにこの国に根付いていた問題が浮き彫りになったように感じます。今までにない概念や存在を見聞きしたとき、なかったことにするほうがラクかもしれません。しかし、マイノリティといわれている人たちは、実は身の回りに多く存在します。  本記事で紹介した当事者やryuchellのように、自分だけの問題として心の中にしまっておく人は珍しくありません。「もし身の回りにいる大切な人がそうだったら?」と“自分ごと化”して考えてみてください。必ずしも存在を肯定する必要はなく、否定しない・存在するものとして認識することが大事なのです。 【関連記事】⇒ryuchellとpecoが開いた新しい家族のとびらとは <文/Honoka Yamasaki>
Honoka Yamasaki
昼間はライターとしてあらゆる性や嗜好について取材。その傍ら、夜は新宿二丁目で踊るダンサーとして活動。
Instagram :@honoka_yamasaki
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