News

小中高生の自殺が過去最多…。地域の映画館を“子どもの居場所”にする取り組みを取材

映画には「外には広い世界が広がっていること」を伝える力がある

©上田映劇

©上田映劇

──上映作品の選定にあたり、どのようなことを心がけていますか? 作品選定は、劇場スタッフとともに選んでいるのですが、さまざまな悩みを抱えている子が多いので、まずは観ることでポジティブな感情を得ることができたり、日常から離れて楽しい時間を過ごすといった体験をしてもらえる作品を選ぶようにしています。 また同時に、作品を通じて親や社会との関係性など、自分自身を客観的に捉えることのできる映画体験もしてほしいと考えています。映画には「家庭や学校の外には広い世界が広がっていること」を伝える大きな力があるので、学校へ行けなくなってしまった自分自身を責めてしまっている子どもたちに、その問題は「あなたが考えているよりも小さいことなのかもしれないよ」と伝えられたらいいですね。 基本的には上田映劇の興行作品の中から選んでいるのですが、子どもたちも観たい作品を選んで足を運んでいることがだんだんと分かってきました。なのでスタッフのほうでも選定をこだわり、今では「うえだ子どもシネマクラブ」で上映したいから上田映劇でも上映する、という逆転現象も生まれているんですよ。 ──困りごとを抱えている子どもたちに対し、映画を観るという体験はどのような影響を与えているのでしょうか。 映画館に通うことで子どもたちの中に起こる変化は、「学校に通えるようになった」「減薬につながった」などの明確なものだけではなく、目に見えないことも本当に多いです。「うえだ子どもシネマクラブ」の子どもたちとコミュニケーションを取るなかで、それぞれ確実に何かが変わってきていることはすごく実感していて、それを「どうやって“見える化”するか」は私たちの課題でもありますね。こうしたことは、「うえだ子どもシネマクラブ」の取り組みに限らず、「なぜ人間にとって芸術文化は必要なのか」という普遍的な問いかけにも繋がるような気がします。 最近は特に、どんな場面においても人をジャッジするような風潮が強まっていて、子どもたちが自由な発想を持ちづらくなっているように感じています。でも、映画の世界は、突拍子もない自由な発想が魅力として輝く場なので、そんな発想に触れながら多様な人生を体験することは、子どもたちの学びに繋がっていくのではないかと思いますね。 <取材・文/菅原史稀>
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ