「マルチ商法にハマる人は身近に結構いる」“マルチ2世”の苦労とは
「母が某大手マルチの会員になったのは、地域で仲よくしていたママ友、Hさん経由です。巷でよく聞くような『夢をかなえたい! 楽して儲けたい!』という動機ではなく、あくまでお付き合いの範疇という感じ。どうせ日用品は買わなくちゃいけないんだし、だったらお友だちのところで……くらいの感覚だったんじゃないでしょうか。だから基本、勧誘行為はしていません。母はおっとりした専業主婦で、トークも正直あまりうまくない。そもそも勧誘してこいといっても、無理なんじゃないですかね」
筆者がこれまで見聞きしてきたなかで、マルチに狙われやすいと思われる典型的なパターンは次のような人だった。
・ビジュアルがよく社交的な人(広告塔になれる)
・顔が広くコミュニティのリーダー的な人(人脈狙い)
・向上心があるが知識の浅い若者(フットワークが軽く熱心に活動してくれるうえ、だましやすい)
Eさんの実家は裕福で、母は言うなれば資産家の奥さまだ。経済的にゆとりがある家庭なら、高価な日用品を継続して購入できるので、それだけでも入会させたママ友の懐は多少潤うだろう。またこれは想像でしかないが「マルチをやっているからあの優雅な暮らしができている」という宣伝に使われている可能性も考えられそうだ。
「あるでしょうね。母を勧誘したHさんは、意識高い系で自分の傘下をがんがん増やしていくタイプ。その手のトークをしている現場を見たことがあります。Hさんの夫がエリート公務員だということもあって周りからの信頼も厚く、勉強会だのホームパーティだの頻繁に開催して、母もたびたび参加しています。さらにHさんが次々といろいろなマルチに手を出すので、母もまた次々と新たなマルチ会社の会員になる。母、ひいては僕たち家族もさまざまなマルチ商品に触れつづけてきました。浄水器やプルーンエキスに、美顔器。もう本当にいろいろあります」
家族の生活に最も影響が出たのは、アロマオイル(精油)を取り扱うマルチブランドの会員になったことだ。
「あのマルチ系アロマオイルは、とにかくジャブジャブと量を使わせるのが衝撃です。ドリンクに加えたりカプセルに詰めてサプリメントのように飲んだり。料理の香りづけも基本全部、アロマオイル。サラダのドレッシングはこのオイルとこのオイル。これは隠し味になになにを使った。デザートのゼリーもアロマオイル入り……。和食系の煮物にも、ジンジャーのエッセンスをポトリ。母の手料理はアロマオイルまみれです。母の持っている資料を見ると、アロマオイルの使用量は楊枝の先にちょっとつける程度と記載されているのですが、僕が食べた実感では、母の料理にはボトルから直に数滴たらすレベルの量が入っていたと思われます。アロマの存在をアピールしなくてはいけませんからね。おそらく、母の仲間もそんな感じです。このペースで消費していたら、そりゃマッサージや芳香に使うよりも効率よく売れるよなと思いますね」
マルチからマルチへと渡り歩く
