――俳優さんは、役を通じて、時に家族よりも深い結びつきを感じる瞬間もあるかと思います。改めてすごい職業だなと。たとえば本作では篤郎に髪を洗ってもらうシーンですとか。
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『あちらにいる鬼』より
寺島「豊川さんには『やわらかい生活』(2006)と今回と、2回髪の毛を洗ってもらっています。そんなことってないですよね。私、旦那にも洗ってもらったことないのに。俳優は不思議な商売ですよ。すごい商売というより、不思議な商売。『愛の流刑地』(2007、豊川悦司主演)なんて、本当にすごかったので、それをやり切っちゃったから、怖いものがないんです」
――不思議な商売とのことですが、豊川さんとの関係も、不思議な関係ですか?
寺島「不思議な関係ですね。これまで一度も打ち合わせをしたことないんです。現場に入ってお芝居して終わり。
何をやっても受け止めてくれる人なので、あえて何も考えずに臨むんです。豊川さんとは、次はなにやったらいいんだろうってくらい、やり切った感じはします。でも、毎回そう思うんですよね」
演じてきた役は、もう全然痛みはしない傷痕のような感じ
――毎回、役柄と一心同体になられてきたと思います。たくさんの作品を演じられてきて、どこか一部でも役は自分の中に残るものですか?
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『あちらにいる鬼』より
寺島「残りますよ。薄れてはいきますけど、忘れることはできません。
たとえば、もう全然痛みはしない傷痕のような感じです。普段は全然意識しないけれど、痕は残っていて、ふと思い出したりする。ずっと残っていますよ。だからしばらくしてまた演じたくなる。その繰り返しです」