Lifestyle

宗教2世当事者のマンガ家が語る「生き方を強要されるつらさ」

宗教2世の共通点「自分で選んだことじゃない生き方を強要されるつらさ」

――トークイベントがこの漫画を描くきっかけになったとのことですが、具体的にどんなイベントだったのでしょう? 菊池真理子(以下、菊池):以前に描いた『毒親サバイバル』で取材した詩人の成宮アイコさんと一緒に主催したイベントで、今回の新刊の第一話に出ている詩人のiidabiiさんや、評論家の真鍋厚さんなど、宗教2世の人たちが自由に話せるイベントでした。配信のイベントだったんですが、たくさんのコメントをいただきました。それを見た編集者から「漫画にしませんか?」と声がかかったのがきっかけです。
菊池真理子さん

菊池真理子さん

――『毒親サバイバル』では、毒親を持つ人たちを取材されていましたが、新刊『「神様」のいる家で育ちました』は家族だけでなく、さらに宗教というかなりデリケートな部分にも踏み込んでいます。宗教2世の方々を取材してみて、印象に残ったエピソードはありましたか。 菊池:かなり回復している人や、まだ回復途中の人など濃淡はあるんですが、それはいろんな要因があってのただの結果論であって、その前段階として「自分で選んだことじゃない生き方を強要されるつらさ」が彼らの共通点としてあるということが、強く印象に残っています。 ――作品に登場する宗教2世の人たちは、物心ついた時から、四六時中「○○しないと神や親に見離される」と脅されたり、あるいはその恐怖を常に抱いていて、非常に過酷な環境だと思いました。第一話では「背中にナイフを突き付けられてるような日々」だと表現されていましたね。 菊池:「ナイフ」と言ったのは、iidabiiさんでした。彼がトークイベントの中でおっしゃっていて印象的だったのは、1世の人、つまり自分で選んで信仰した人が、「(教義によっていろんな制約を課せられるので)ピーンと張り詰めた糸みたいな人生」だと表現したんですって。そして、そこから脱会した時に「糸がぷつんと切られたようだ」と。 iidabiiさんはそれを聞いたときに、2世は糸どころじゃなくて、何かに後ろからナイフを突きつけられていると感じたそうです。

人生って悪者はいないですからね

菊池真理子「酔うと化け物になる父がつらい」秋田書店

菊池真理子「酔うと化け物になる父がつらい」秋田書店

――2017年に刊行された『酔うと化け物になる父がつらい』で、タイトル通りお父さんをめぐって、ご自身のご家族を描いていますが、その第1話のラストでお母さんが亡くなり、非常に衝撃的でした。今回はそのお母さんやご自身のことについて描かれています。 菊池:『酔うと化け物…』の時は、「お母さん可哀想ですね」という意見が多かった。でも、今回この本を出したことによって、「そりゃお父さん飲むよね」と、イメージが反転した人もいるんじゃないかなと思っています。 でも人生って悪者はいないですからね。どちらが悪いとかじゃなくて、どの視点から見るかっていうだけで。 ――ご自身の家庭について、描きたくないなと思うこともあったと思います。そういう時、どうやって乗り越えたのでしょうか。 菊池:たぶん私が描きたくないって思うことは、きっと皆さんが読みたいと思うところだろうと思って描きました。
次のページ 
連載中に公開終了に
1
2
3
4
5
6
7
8
9
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ