――「何が幸せなのか」と思った時期もあったとのことですが、今現在、自分にとっての幸せは見えてきていますか?

『夜、鳥たちが啼く』より
山田「俳優・山田裕貴としての幸せはすごく感じているんです。ありがたいなという状況が、ものすごく続いています。ただ、今までは、それと個人としての幸せが比例していると思っていました。でもそうじゃないと気づいたところです。
夢を叶えることと、幸せになることとは同義語ではないんだなと。だからいまは模索中です。過去には戻りたくないし、今の状況はありがたいんです。ただ、この作品とも通じるんですけど、僕のことを見つけて欲しいというか。もちろんずっと応援してくれている人たちや、分かってくれている人もいるんですけど、でも“知らない人”が増えていっている気がするんですよね」
――“知らない人”ですか?
山田「僕のことをイメージだけで、『こういう人だろう』『こういう人だ』と思ってしまっていて、本当の僕のことを知らない人が増えていると恐怖を覚えるときがあります」
――なるほど。かつて山田さんは、「山田裕貴という存在を知ってほしい」と話していましたが、キャリアを重ねてきて、また次の気持ちになっているんですね。
山田「いろんな感情があって。でも今も、俳優・山田裕貴という存在を知ってもらうことに満足しているわけではないんです。迷いながら、探しながら、やり続けていけばいいと思っています」
――松本さんは何か見えてきましたか?

『夜、鳥たちが啼く』より
松本「私が山田くんと違うのは、少しだけ休めたことです(※今春に1カ月休業)。実際の山田くんの心中は分かりませんが、凄まじい仕事の量をこなしていて、どこからそのエネルギーが沸き続けているんだろうと思います。耐えられないくらいの負荷がかかった中で表現を続けていて、本当に凄まじい人だなと。私は求められていない時期がすごく長かったので、求められたときに、応じたいと思って、全力で応えてきました。それが幸せなんだと。
でもあるときから、全然幸せを感じられずに、『感じなきゃ!』と思っていたんです。それって幸せじゃないですよね。求められる状況は幸せなことです。でも私はこの幸せな状況を、幸せだと感じる心が今ないんだな。心を育てなきゃと気づいて、1度ストップすることにしたんです。それによって、ようやく幸せというか、自分の心が見え始めてきたような気がします。先にごめんね(笑)」
山田「おめでとうございます。羽化ですね」
松本「でもまたスピードが速くなってきていて、そのなかでも自分が幸せに感じられるかどうか、努力するのは自分だと思っています。必死に頑張った先に幸せがあると思って、極限まで頑張ってきました。これからはもっと自分に優しく、持続可能な幸せの感じ方で、なおかつ感性を研ぎ澄ましてちゃんといいお芝居ができるように。ちゃんと成長し続けながら、新しい生き方を探そうと思っています」