モフモフしたルックスのネコ助は、まるでぬいぐるみのよう。いつも穏やかな表情でモモによりそいます。でも人を癒すだけがネコ助の役割ではありません。料理の知識と知恵はあっても、ネコ助はモモに手を貸そうとはしないのです。猫の手も借りたい、とはよく言いますが、ちんまりした猫の手では料理はできません。ここが本書の特徴であり感心すべきところ。そう、ネコ助の指導によってモモは次第に料理上手になり、料理の楽しさを知っていくからです。
やがて友人への簡単なおもてなし料理も作るようになり、料理をとおしてモモとネコ助の絆も深くなっていきます。お互いがかけがえのない存在となっていき、モモはネコ助の過去を知ることになるのです。
料理をおしえてくれる条件でネコ助を迎え入れたモモですが、今ではすっかり料理上手になりました。存在意義がないと悟ったネコ助はモモに別れを告げるのですが……。
ここから先は、本書を読んで泣いて、笑ってください。ほのぼのとしたイラストとおいしそうな料理と、モモとネコ助の友情に心がほっこりすること間違いないです。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx