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阿川佐和子(69歳)が「もう泣いちゃう」と思った鈴木亮平の“一言”/映画『エゴイスト』インタビュー

わたしは「図々しくもいろいろなことをするタチ」

©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会――最近、俳優としての活動が増えたように思いますが、今回オファーが来た際の心境はいかがでしたか? 阿川:TBSの日曜劇場『陸王』に出て以来、ドラマや映画の演技の仕事をちょくちょくいただくようになりました。今回は母親役だったので、面白そうだなと思いました。ただ、監督とプロデューサーがわたしをなぜ起用してくださったのか、その期待に応えられるのか、そこは不安でしたね。 ――決め手は何でしたか? 阿川:わたしは図々しくも多岐に渡っていろいろなことをするタチで(笑)、やらないと決めているものもいくつかありますが、基本的には一緒にやる人が魅力的だなとか、面白そうだなとか、そう感じると、つい引き受けちゃう傾向があるみたいです。もちろんその仕事の中身が興味深いものであることは前提条件ですけれど、たとえばタッグを組む人が素敵だなと思うと、その人に学びたい気持ちが大きくなるんです。 ――まずは、出会いを大事にしたいこだわりがあるのですね。 阿川:ただ、始めてからわかることもたくさんあります。週刊誌の連載も30年もやっていると、担当編集者も16回くらい代わり、だんだん息子、娘のような年になるんです。最初から年下ではありましたけどね(笑)。仕事のやり方はそれぞれですし、性格も全員違いますが、最終的に面白いものを作ろうよと、そこに向かう気持ちが一致していれば、仕事ってやる気が湧いてくるものですよね。 もちろん1、2回お会いしただけではわからないこともたくさんありますが、私が仕事を引き受ける条件は何かと聞かれたら、一緒にタッグを組む人たちが、一緒にいいものを作ろう、面白いものを作ろうという気持ちが近い人とタッグを組みたい。仕事の内容が違っても、それはむしろ、知らない世界だからこそのぞいてみたいという気持ちになります。

「若い時に戻りたいとはぜんぜん思わない」

©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会――美容、健康面については意識していることはありますか? 阿川:わたしはどちらかというと、“あるがまま派”ですね。老いていくということは情けない部分もたくさん出てくるし、悲しくなることもある。でも、それは受け入れなきゃね。だってこれだけ長い年月、毎日欠かさず血液を循環させて、健康を保つために働いてくれてるんですよ。そりゃシワも寄るし、たるみも出てくるでしょう。若さも魅力的だとは思うけど、老いていくことにだって、得るものはたくさんあると思いますよ。 だから私は20代に戻りたいかと言われたら、そんなことはない。父はうるさかったし、仕事は見つからなかったし、嫁入り先は決まらないし(笑)。あんな不安な時代に戻るより、今のほうがずっと楽しくて幸せです。ビクビクしていました。レギュラーの仕事を始めたのが30歳のひと月前でしたから。世の中の人よりもすべて10年遅れているという意識がずっとありました。 ――意外にも、コンプレックスがおありだったのですね。 阿川:何をやるにも自分より若い人たちに教えてもらうという時代がずっとあって、怒られてばっかりで、すぐ泣いて逃げていました。でも、よくみなさん見捨てなかったと思います。ギャラが安かったので使いやすかったのかも知れませんが(笑)、クビにされると誰かが拾ってくれるを繰り返し、大きな事務所にも入らず、この年まで! 今年で古稀ですよ(笑)。 仕事を始めたのが遅かったのはありますが、古稀まで新しい注文が来るって「なんで?」って自分でも驚くくらいです。それは歳を重ねたことによって学んだことが、誰かに「こいつを使ってみようかな」と思わせているとしたら、歳を取ってよかったなあと思う。イタく聞こえるかも知れませんが、若い時に戻りたいとはぜんぜん思わないんです。やっといろいろなことができるようになったから。現にこうして映画にも出られているんだから、ありがたいことですよ。 <取材・文/トキタタカシ>
トキタタカシ
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
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