毒親に苦しみ続けてきた33歳女性…さらなる絶望を招いた“友人からの助言”<後編>
フリーランスのデザイナーとして活躍するかなみさん(仮名・33歳)は、幼少期より母親の存在で頭を悩ませています。母親のYさんは世間でいうところの“毒親”の典型的な行動を繰り返すタイプだったからです。
小学校高学年にして自分の家庭がおかしなことを知り、Yさんの過干渉がヒートアップするほどかなみさんの心は苦しめられる一方。実家では気分が全く休まらない、そんな厳しい子ども時代を過ごします。
高校卒業後は専門学校へ通いつつアルバイトを掛け持ち。親の反対を押し切って実家を飛び出したかなみさんですが、このあと予期せぬ事態が彼女を待ち受けており……。
【前編】⇒“毒親すぎた母”の異常性に気づいた瞬間…「パパと2人になりたくない」
机の中を見られることも、今日の出来事を根掘り葉掘り聞かれることもない……。かなみさんは独立後、精神状態がかなり安定していたそう。ようやく1人の時間が持てたことにホッとしたのです。課題とアルバイトに追われる生活は相変わらずでしたが、解放感に溢れた毎日はとても充実していました。
しかし、平穏が訪れたのも束の間。独り暮らしを始めてから1か月が経とうとした頃、母親からの度重なる連絡が目立つようになりました。
過干渉こそ酷かったものの今まで連絡がしつこく来ることはなかったため、かなみさんは再び気が滅入ってしまうのです。
「母は機械にあまり強くなく、スマホの操作が面倒なタイプだったので、今まで連絡がしつこいことはなかったんです。だから急に“鬼電”と“鬼LINE”の嵐が起きて動揺してしまって。自分の中で油断していたというか、想定外の行動だったんですよ。
それに“(相手のアカウントを)ブロックしておけば良かったのに”と言われるかもしれませんが、何かあった時に困ると思ってできなかった。まだこの時は絶縁まで考えていませんでしたし。でも、私の詰めは甘かったのかな……。やっと1人になれたのに、止まらない連絡のせいでまた気が休まらなくなってしまいまして」
大量の着信履歴に何十件も溜まっていくLINEのトーク。かなみさんに追い打ちをかけられたような気分に陥り、未読メッセージの数を見るだけで気が滅入っていました。
恐る恐るトークルームを開くと「どこにいるの?」「何してるの?」「〇日以内に返事をしなければ学校に連絡するからね」「今すぐ帰ってらっしゃい」と似たような言葉ばかりが並ぶのです。
一人で悩みを抱えきれなくなったかなみさんは同級生に相談すると、親を大事にするべきだ、との返答が。かけがえのない家族だからこそ、今冷たくしたらあとあと必ず後悔すると友人は主張するのです。
母親からのLINEは誤字脱字だらけ。文章も滅茶苦茶で何が言いたいのか分からないトークさえあります。「もしかすると母は気が動転しているのかもしれない、不慣れなスマホを扱いながら自分を本気で心配しているのかも……」と、かなみさんは自分が親不孝者であるように思えてきました。
「親子だもん、話せば分かり合えるよ」、という友人の助言を頼りにYさんからの連絡に応答。きちんと向き合う覚悟を決めたものの、彼女の決意は粉々に打ち砕かれます。
電話口で一方的に責められ、怒られ、母親の説得は見事に失敗。意見を一切聞き入れてもらえず、“話せばわかり合える”なんて状態ではなかったと言います。
一度連絡に反応したことが仇となり、毎日のように鬼LINEが送られてくる始末。友人のアドバイスを鵜呑みにしたことが、余計に自分を苦しめる結果を招いてしまいました。
LINEの内容は非常に些細なことから、実家でよく聞かれていた交友関係のことやかなみさんへのどうでもいい注意など。今まで母親の口から発された言葉たちが、そのまま文章化されて送られてくるのです。
“家族を大事にする”、かなみさんはそのことを重々分かっています。けれども近づけばつらい現実が待ち受けている。「あの時心を鬼にすれば何かが変わったかもしれない」と、彼女は今でも過去の行動を悔やんでいたのでした。