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色気を奪われた斎藤工を見るべきワケ。おちぶれた漫画家を演じた映画『零落』

血管まで深く浸透する“工な”低音ボイス

©2023浅野いにお・小学館/「零落」制作委員会 3月9日に渋谷のユーロライブで行われた特別試写会で筆者は本作を観た。上映のあとにトークショーが行われ、斎藤工が登壇した。そこで斎藤が使っていた「わたくし」という一人称が気になった。  斎藤の口から発せられた「わたくし」は、深澤のようなもごもご感は全然ない。聞き手の耳に滑らかに入り込んできて、脳内に反響しながら、首筋の血管まで深く浸透する。そう、斎藤工は、血管まで深く浸透する声を持った俳優なのだ。  この声が、竹中監督の演出手腕とセンスで作られた映像世界に響く。最初はもごもごと、そこから徐々にクリアに。まるで画面を押し広げるかのような力のある美声だ。まさに“工(たくみ)な”低音ボイスが、上映後も観客の身体を揺さぶり続ける体験だった。斎藤工は、色気を封じられても、声だけで艶(なま)めかしさを表現できる人だなと思った。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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