Entertainment
Lifestyle

38歳・松山ケンイチさん「家庭を持った今、死ねない理由が強烈にある」

 連続殺人を犯した介護士の主人公に思うこと

――斯波(しば)にはどんな印象を持ちましたか?
斯波の悲しさ。この大きな問題を何らかの形で世に

『ロストケア』より

松山「(斯波がかつて父親を)介護をしていたとき誰も頼る人がいなくて、誰かに頼ろうと思って役所に行ったんだけど、『これでは受けられない』と言って拒否された。それで孤立していった。これってすごく悲しいことだなと思いました。今、日本はこんなに平和だとみんなが振舞っていて、何不自由なく生活しているように見えてますけど、中にはこうして助けてくれと言っても誰にも助けてもらえられないような部分がある。自分は知らなかっただけなんだと感じました。  斯波は普通の人だし、一般的な人。違いがあるとしたら何があるんだろうと。これってすごく悲しいことだなと、すごく刺さって。この大きな問題を何らかの形で世に出すことは、インパクトがあるんじゃないかと思ったんです」
家庭を持った今、死ねない理由が強烈にある

『ロストケア』より

――後半になるにつれ、斯波と大友検事(長澤)のやりとりは、観る側への問いかけに見えてきます。 松山「原作からも、ふたりは検事と殺人犯というだけでなく、日本が、これからどうやってどういう未来を描いていくのかという、未来の話をしているように、僕は感じていました。次の世代に、自分たちがどう死んでいくのかを真剣に語っていると、僕は原作から感じたので、そこは映画でもやりたいところでした」

家庭を持った今、死ねない理由が強烈にある

子どもを自立させなきゃいけないから今は死ねない――10年越しで動いてきた映画が公開になったわけですが、10代の頃の自分が今の松山さんを見たら、驚くでしょうか。 松山「考えられないです。当時はとにかく目の前のことに精一杯でしたから。今だって、これから先どうなるか分からないし、どんな出会いが待っているか分からないですけど、でも終活だけはしておこうと。実際やっていますけど、この作品でさらに強まりました。今、死ねないからこそ」 ――「今、死ねないからこそ」、死を意識すると。 松山「はい。『今、死ねない』というのは、結婚してはっきり思うようになったことです。それ以前は、何のために生きているのか、そこへの強烈な意志みたいなものがなかったんです。『自分はなぜ生きなきゃいけないのかな、死ねないのかな』ということに、明確な答えが出せなかった。でも今ははっきりと、『子どもを自立させなきゃいけないから、今は死ねない』と思える。死ねない理由が強烈にあるんです。そこは大きな違いですね」 (C) 2023「ロストケア」製作委員会 <撮影・文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ