38歳・松山ケンイチさん「20代中盤までは“ある意味”引きこもりだった」
大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)、そして1月期に放送されたドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS)の好演も記憶に新しい、俳優・松山ケンイチさん(38)。俳優デビューから20年を過ぎた今も、厚い支持を受け続けています。現在は、主演を務める映画『ロストケア』が公開中。
ある民家での死体発見をきっかけに、献身的な介護士として評判だった訪問介護センターで働く男・斯波が、連続殺人の容疑で逮捕され、「殺したのではなく救ったのです」と告白し、問題提起していく社会派ミステリーです。
俳優・松山ケンイチを超えて、個人としてもっと“太く”生きていくために、芸能界という限られた世界にいた自分から、外へと踏み出していこうと決めたという松山さん。「20代中盤までの僕は、自分の人生における引きこもりだった」と振り返ります。
【インタビュー前半】⇒38歳・松山ケンイチさん「家庭を持った今、死ねない理由が強烈にある」
――かつて対談の仕事をされた際に、ご自身の生と死について深く考えるようになったとお話されましたが、松山さんは、以前からご自身の生き方とお仕事がリンクしている、影響を受け合っている印象を受けます。それは自然に? それとも敢えてですか?
松山ケンイチさん(以下、松山)「僕は17歳から東京に出て来て、アルバイトをして少しずつ仕事を始めていきましたが、いろんな人と出会って、異業種の方たちと話して、名刺持って交流して、時には飲みに行ってといった、いわゆる社会経験というものをしてこなかったんです。
立場とかいろんな違いから、考え方や価値観も全然違ってくるとか、そういうことを勉強してきていない。俳優として演じる役からしか、人生の勉強をしてこなかった。だからどうしても、『この役の生き方は面白いな』とか、『こういう役の生き方はしたくないな』とか、自分が主体じゃなくて、受け身になるんです。それをひっくり返したかったんです」
――ひっくり返したいと思ったきっかけは?
松山「家族を持ったことです。結婚して子どもができて。いつまでも受け身でいる自分では足りないと気づいた。それまでも危機感はあったんですけど、はっきりひっくり返したいと思いました。それで足りない部分をどうにかするためには、自分で動くしかないと。自分で動いて何かを得ていく。役から得られるものだけではなくて、俳優の仕事以外の世界、外の世界は無限に広がっているわけだから、そこで自分が何を感じるか、何を掴んでいくのかの方が大事だと思いました」
――松山さん自身が人として太くなっていくために。
松山「はい。20代中盤までの僕は、自分の人生における引きこもりだったと思います。映画業界、俳優としての世界が全てだったから。外に出たことによって、本当に面白い人たちがたくさんいることに気づきましたし、それによって、もっと面白い演技ができる、表現できるとも思いました。役より面白い人って、いくらでもいますからね。
今までは役が面白かった。けど、自分自身が社会で何かを吸収して面白くなれれば、役に何かプラスアルファが生まれて、自分が役をもっと面白くできるかもしれない。さらにいろんな解釈もできるようになるかもしれない。そんな風になりたいな。そのためにも、自分自身が面白い人間になりたいなと、本当に思ったんです。そして外に出て、いろんな人から、たくさんのことを学んでいます」
受け身でいる自分をひっくり返したかった
20代中盤までは、人生における引きこもりだった
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