
ちょっと前までは、安藤さんぐらいの体型だったやぎゅうさん
――ずばり、やぎゅうさんが痩せたきっかけとは?
やぎゅう:コロナ禍の長引く自粛生活で、もう寂しさに耐えきれなくなったのが大きいです。「わたしもやせて恋人がほしい!」と強く願うようになりました。恋愛モードに突入したのは人生初です。35年以上生きてきて、初めて「彼氏が欲しい」って切実に思ったんです。
安藤:それまでは、人生すべてをお笑いに捧げていたもんね。生活のすべてを費やしているというか。あ、あと唯一の趣味といったら、BL(男性同士の恋愛を描いたジャンル)好きっていうくらい。
やぎゅう:筋金入りのBL好き女子でしたね。そうですね……、芸を極めることに命賭けてました。ぽっちゃりネタを極めたくて、80キロ台の中途半端なおデブから、自分で望んで108キロになりましたから。
――最近では、「人を外見で評価や差別をしたり、“いじる”のはよくない」というルッキズムもよく問題になっています。芸人さんたちの間ではどのような反応がありますか?
やぎゅう:本当にこの数年の変化だと思います。芸人の間でも、“体型をいじっても笑いはとれない”っていう空気になってます。私も直接先輩から「(太っているのを)いじりにくい」って言われたこともあったし。だんだん「この体型が笑いの邪魔になっているのかな……」と思いはじめて、いろんな要因が重なって一大決心をして痩せました。
安藤:うんうん。
やぎゅう:でも、ぽっちゃりネタを武器にずっとやってきたので、痩せたら笑いの量も減るんじゃないか?という恐怖心もすごくありました。女としては痩せたいけど、芸人としてそれは正解なのかって。
安藤:で、実際どうだった?
やぎゅう:……同じだったんですよ。M-1グランプリのトーナメントで108キロのときは2回戦で敗退したんです。そして、痩せたときも2回戦までいきました。私が勝手に「脂肪は武器だ」と信じ込んでいただけでした(苦笑)。痩せてからの方が、できるネタも増えましたし。「おデブはいじっていい」「体型で笑いを取る」っていう時代は終わったんだなあと痛感しましたね。
――安藤さんは昔から一貫して、体型をネタの軸には持ってきませんよね。
安藤:そうですね。メイプル超合金は、片方は赤くて、もう片方は太っているっていう、ただそれだけ。ネタは相方が作ってくれていて、台本が面白ければそれでいいよねって。まあ、しいて言えば、この体型のおかげで、強い言葉やきついツッコミも、私が発すると勝手に丸みを帯びてやわらいでくれるのかなあ~って。
やぎゅう:その、芯が通ってる感じがかっこいいんです。ぽっちゃりなのに、ぽっちゃりをあまり武器にしてない。なつさんは体型だっておデブっていうより、元プロレスラーで今も筋トレもされているから、実は筋肉質でがっちりしていてすごく素敵です。昔から、私の憧れの人です。
安藤:めっちゃ褒めるじゃん。でもまあ、体型のことで相方と「それをコンビの武器にしよう」とか話し合ったことは本当にない。だって、ただでさえふたりとも絵的にもキャラクター的にも大渋滞してるから。もうお腹いっぱいでしょ。
やぎゅう:たしかに(笑)。