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幼児教室ママたちの異様な熱狂。幼稚園児に「検定試験に向けてのガリ勉」は本当に必要?

―連載「沼の話を聞いてみた」― 未就学児に知識や技術を習得させる「早期教育」。気軽なお稽古(けいこ)感覚のものから、後の進学や受験を見据えた気合の入ったものまでと幅広くあるが、当連載のテーマは「沼」なので、今回の体験談は後者である。 現在50代の歩(あゆみ・仮名)さんが早期教育として某知育教室に熱を入れていたのは、すでに成人している息子の幼稚園時代なので、いまから20年ちょっと前。
知育教室沼202307①

※写真はイメージです(以下同)

その教室は教育熱心な母親たちのあいだで口コミで広まり「知る人ぞ知る有名な存在」だったという。 「あの教室で出会った母親たちの、切迫した熱意。いまでもリアルに思い出されます。教室に時間をとられて生活が荒れていくのに、いまやらないと周りから遅れをとるのでは……と焦る気持ちも」 ドラマ化された漫画『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』(高瀬志帆著・小学館)では、中学受験を「父の“経済力”と母の“狂気”」と説明するセリフに注目が集まったが、歩さんの話に出てくる教室のママ友たちも、まさにそんな感じであった。

子どもにはハードすぎる一日

「そこでは、積み木を使って数の考え方を学ぶ授業がありました。ウチの息子はたまたまレゴとかが大好きだったんで、積み木というポイントがツボに入ったみたいで。ママ友からの口コミで体験に行くと、本人がやりたいと言うので通うことにしたんです」 当時は、授業を1コマごと予約して受講するスタイルだった。知育教室なら週に1~2枠くらい……? なんとなくそう思っていたら、そんなゆるい世界ではない。 フルに時間を使える土日には、1日に可能なかぎりの授業を申し込む熱心な親が多かったという。1コマ45分(小学校と同じだ)で朝10時から8コマ確保、6時間授業の小学生よりハードである。 知育教室沼202307①はじめは最低限でと思っても、あれやこれやとかさんでいくのは習い事の常であるが、競争心をあおられ周りの価値観に染まり、どんどんエスカレートしていくのは、これまで体験談を聞いてきたカルト宗教や推し活、美容整形などにも共通しているように思えた。

中学受験を少しでも有利に

「通わせている親はほとんど、いずれ来る中学受験に向けていまからアドバンテージをとっておくのが目的でしたね。小学校3~4年生で本格的な学習塾に入る前に、ある程度の段階までは下準備しておこうという感じです」 公文などの学習教室や通信教育、英会話などはいまの時代でもめずらしいものではなく、程度の差こそあれ多くの家庭がやっている取り組みだろう。しかし歩さんたちの早期教育事情は、より効率よく、より目標に近づけるよう、熱意がフルスロットル状態だ。 「とあるお母さんは、その授業を詰め込んだうえ、わずかな待ち時間に漢字検定の勉強をさせていました。よっぽど漢字が好きな子どもとかならいいですけど、幼稚園児に検定を受けさせて意味があるのか」
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犠牲になるのは子どもの生活習慣
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自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。「女子SPA!」のお問い合わせフォームより、ぜひお気軽にご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。
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