
画像:日本テレビ『最高の教師』公式サイトより
ニュースを見れば、SNSを覗けば、触れるのもためらわれるような悲しくつらい事件や言葉で溢れている。似たような報道を見かけるたび「またか」と思ってしまう自分のことさえ、嫌いになってしまうような。
そんなとき、約4年前の2019年に放送されていたドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』を思い出す。菅田将暉演じる美術教師・柊一颯が、教え子30名を人質に監禁事件を起こした、その顛末を描いたドラマだ。
この『3年A組』のスタッフが再結集した『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』は、かつて柊が命を賭けて伝えようとした“たった一つのメッセージ”を思い出させる。言葉が凶器となり、人を傷つけ、その果てに命を奪うような事態に繋がりかねないこと。
4年の時を経て、松岡茉優演じる高校教師・九条里奈が淡々と、生徒たちを諭す。それは、4年を経て再びおこなわれる“魂の授業”だ。
かつて柊は言った。「自分の言葉と行動に責任を持て」と。そして九条は言っている。「なぜ顔と声を出して意見しないのか」と。双方のメッセージは矛盾しているようにも見えるが、彼らが伝えたいことの芯にあるのは“責任”そして“主体性”のように思える。
残念ながら、私たちは繰り返してしまっている。4年前に受けた教えは、まったく生かされていない。『最高の教師』は、その事実を知り、どこまでも打ちのめされ、そして、またここから始めていくための物語だ。

画像:読売テレビ『CODEー願いの代償ー』公式サイトより
いわゆる考察ドラマは社会現象を巻き起こすことがある。直近で思い浮かぶのは日テレ系列『あなたの番です』(2019)だろう。放送当時、SNS上は真犯人の予想合戦で盛り上がっていた。
2023夏ドラマにおける考察ドラマの隠れた名作として『CODEー願いの代償ー』(日テレ系列)も挙げたい。まさに考察班の腕の見せどころといえる、伏線が散りばめられた作品だ。
主人公・二宮湊人(坂口健太郎)は暴力団対策課の刑事。婚約者・七海悠香(臼田あさ美)が亡くなった事件の真相を追うため、願いを叶えてくれるアプリ「CODE」に手を出す。7月30日に放送された第5話では、親友の百田優(三浦貴大)がCODEプレイヤーであり、悠香の事件に関係していることがわかる。しかし、事実が判明した直後に彼は自死してしまった。
悠香を死に追いやった黒幕の仲間は、確実に警察内部にいる。内通者は誰なのか、そして黒幕の正体は。アプリ「CODE」をめぐる人間心理とともに、読みがいのあるドラマである。
<文/北村有>
北村有
葬儀業界を経て2018年からフリーランス。映画やドラマなどエンタメジャンルを中心に、コラムや取材記事を執筆。菅田将暉が好き。