――公開されたばかりの主演映画『アンダーカレント』では、まったく別の表情を見せていただきました。失踪した夫(永山瑛太)を待ちながら、住み込みで働くことになった男性(井浦新)と家業の銭湯を切り盛りしていく、ある過去を抱えた女性・かなえ役です。非常に複雑で、苦しさもある、難しい役だったかと。
真木「難しい役のほうが、やりがいがあります。私、自分は芝居ができないと思っているんです。本当に自分自身が役に気持ちを持っていって、一体になって、画面の前に立つタイプなんです。器用にできる役者さんを羨ましいなとも思いますが、そういうのは得意ではなくて」
――そうすると、かなえのような役は余計に苦しいのでは。
真木「深ければ深いほど、やりがいを感じます」
――真木さんはもともと同名の原作コミックのファンだったそうですが、かなえを実際に生きたことで、新しく見えたこと、感じられたことはありましたか?
真木「私は自分自身のことも分からないと話しましたが、本作でも、“人をわかるってどういうことですか?”というセリフが登場します。その言葉をより感じるようになりました。人のことを、100%分かることは無理だけど、大切な人であればあるほど、“分かろう”とはしたいというか、あと、分かった気にならないことが大切だと。そういったことをすごく気にするようになりました」
――分かった気にならない。
真木「もしかしたら、“この人ってこういう人だよ”とか簡単に言ってしまっていたことが、全然間違っていたかもしれないし、第一印象で“ちょっと苦手だな”と感じた人が、実はすごく気の合う人だったかもしれない。そうしたことが過去にあったのかもしれないなって。分かった気にならない。そのうえでやっぱり分からなかったとしても、分かろうとすることが愛情だと思うので、そういう行動はしていきたいな、大切にしていきたいなと、改めて感じられました」

<撮影・文/望月ふみ>
(C) 豊田徹也/講談社 (C) 2023「アンダーカレント」製作委員会
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi