2018年に『櫻井・有吉THE夜会』（TBS）に出演したときには、つなぎを着て、洗車を実演した。 　久しぶりの洗車に思わずテンションが上がったのか、車に「あんた」と呼びかけ、会話する。思わず「変人」とテロップが出るが、いやはやこれはもしかしたら俳優以上に筋金入りかもしれない。 　そう思うくらいサマになっているのだが、現在の俳優業にも活かされていることがある。それは声が大きくなったこと。発声と声量は俳優にとっては基礎中の基礎。これがちゃんとできなければ演技はままならず、成立しない。 　窪田の現在の演技力を支えているのは、意外にもガソリンスタンドでのアルバイト経験だったのだと考えることもできる。きっと窪田は洗車する車と同じように、演じるキャラクターとも会話しながら役作りをしていくのではないだろうか。 　ガソリンスタンドでのバイト経験と俳優の演技力にはなにかしらの連関性があるのかもしれない。 　さらに調べていくと、他にもあの大スターがいた。2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で見事な主演ぶりを見せつけた小栗旬である。 　ゼロ年代、『花より男子』（TBS、2005年）や『花ざかりの君たちへ～イケメン♂パラダイス～』（フジテレビ、2007年）などの話題作に出演し、名前のごとく旬な存在感で時代を駆け抜けたイケメン俳優だった。そんな小栗も現在40歳。日本を代表するベテラン俳優のひとりとなった。 　そして彼もまた高校時代にはガソリンスタンドでバイトをしていた。しかも実家からわずか30秒という徒歩圏内での初バイトだった。1998年に、反町隆史主演の大ヒットドラマ『GTO』（フジテレビ）で、いじめられっ子を演じる直前である。 　ガソリンスタンド業務のキモはやはり接客だろう。お客からするとできるだけ短い停車時間がいい。店員はスピーディーな動きを求められる。ハキハキした応対も重要。こうした接客から学んだコミュニケーション力を俳優としての礎にした。 『クローズZERO Ⅱ』（2009年）では、最強の不良高校生として土浦の廃ガソリンスタンドでたむろするだけで異様な凄みを発揮していた。