とはいえ、
自分のためにやっていることでも、他人の何気ない一言で冷めてしまう瞬間は往々にしてある。それが悪意なき言葉であっても例外ではない。たとえば2022年11月に放送されたドラマ『
作りたい女と食べたい女』(NHK総合/原作:ゆざきさかおみ)の1話では、以下のようなやり取りがあった。

料理好きの野本ユキ(比嘉愛未)が職場で手作り弁当を食べようとした時、同僚の男性社員・森岡(中野周平)から「それ野本さんの手作りですか? すげぇ」と驚かれる。続けて、「
野本さんって絶対いいお母さんになるタイプですよね」「良いな、俺も彼女にお弁当作ってもらいたいな」と口にした。
この“賞賛”に野本は「
自分のために好きでやっているものを、全部『男のためだ』って回収されるのつれぇな」と不満を覚えていた。
料理もメイクも“女性的”なものと捉えられやすい。それらを本人たちが能動的に楽しんでいても、「女子力がある」「いい奥さんになれる」といった言葉をぶつけられるケースは少なくない。これは男性であっても同様で、筋トレやドライブなどが“異性のため”と勝手に結び付けられやすい。
“自分のため”を勝手に“誰かのため”だと上書きされることは苦しい。場合によっては白けてしまい、以前のように楽しめなくなることさえある。
もちろん、同僚男性は決して野本を傷つけるために「絶対いいお母さんになるタイプですよね」と言ったわけではない。むしろ褒めているつもりで発した言葉ではあるが、その褒めが「誰かのためになる」というニュアンスを含んでいる場合、一度口に出すことは自重したほうが良いのかもしれない。
『セクシー田中さん』にも、1月からドラマシーズン2が始まる『作りたい女と食べたい女』にも、私たちの先入観や思い込みにふわっと疑問を投げかけるシーンがちりばめられている。その人の“好き”にラベルを勝手に貼らないように気を付けたいと思う。
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<文/望月悠木>
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望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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