また、2022年の敗者復活戦でオズワルドが勝ち上がったことも影響している。敗者復活戦で披露された漫才は公式YouTubeに投稿されるが、再生数は1位のオズワルドよりも2位の令和ロマンが多く、令和ロマンの漫才が支持されていた印象。「オズワルドは知名度で選出された」という意見もSNSで散見された。

令和ロマンは今年M-1ファイナリストに ©M-1グランプリ事務局
ただ、SNSだけで意見を言い合っていただけならさほど問題はない。オズワルド・伊藤俊介は6月に開催された「M-1」開催記者会見に出席した際、「
敗者復活に関しても終わった後、たくさんのDMで『令和ロマンに謝れ』と言われまして」と話している。本当のところ、「令和ロマンに謝れ」といったものだけではなく、恐らくそれ以上に過激なメッセージが送られていたように思う。
「M-1」の知名度が上がり、“正義感の強い人”も多く視聴するようになった結果、芸人が傷つけられるケースが増加したのではないか。“正義感の強い人”に自重を呼びかけることは難しく、公平性と納得感を保たれたルールを整備する必要があり、運営側は今回の変更を決めたのかもしれない。
評価を観客に委ねた「THE SECOND」の影響も?
敗者復活戦の新ルールはとても秀逸である。各ブロックの勝者はランダムで選ばれた観客が決める。つまりは観客投票であり、一見国民投票で危惧されていた人気投票になりかねない。しかし、2023年から開催された芸歴16年目以上の芸人が出場資格の賞レース「THE SECOND~漫才トーナメント~」(フジテレビ系)では、予選から決勝まで観客全員による投票が行われたものの、特に勝敗に関する不満の声は聞かれなかった。
審査後に観客にコメントを振るなど、観客側に責任感を覚えさせる“仕掛け”がなされていたが、芸人の人生がかかっていることを理解したうえで責任を持って観客が投票したことが波風が立たなかった要因と言える。敗者復活戦でもルールは異なるが、観客に委ねるという意味では同じ。
「THE SECOND」が「観客に任せても良いのでは」と思わせる大会になったことが今回のルール変更の背景にあるように思う。
とはいえ、観客投票のみではなく、最終決定はプロが判断することにより公平性と納得感を与えることができる。かなり考え抜かれたハイブリッドなルールであり、敗者復活戦を巡る騒動は落ち着くかもしれない。
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「M-1グランプリ2023」ファイナリスト(以下同じ)、カベポスター/ ©M-1グランプリ事務局
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くらげ ©M-1グランプリ事務局
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さや香 ©M-1グランプリ事務局
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ダンビラムーチョ ©M-1グランプリ事務局
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マユリカ ©M-1グランプリ事務局
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令和ロマン ©M-1グランプリ事務局
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モグライダー ©M-1グランプリ事務局
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ヤーレンズ ©M-1グランプリ事務局
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真空ジェシカ ©M-1グランプリ事務局
<文/望月悠木>
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望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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