堂本剛&百田夏菜子の電撃婚が「アイドルの理想形」である理由
“世界の平和を願い、自分たちのいまに感謝を込めて、一日一日を大切に生きていきたいと思います。皆様のお心が少しでも平安に向かいますよう心よりお祈り申し上げます”
KinKi Kidsの堂本剛とももいろクローバーの百田夏菜子の結婚報告の一文である。ふたりの電撃結婚は、なにかと暗い話が多いなか人々を明るい気持ちにさせた。
筆者はおふたりにそれぞれ一度だけ取材をしたことがあるだけなのだが、そのときいい印象しかなかった。そしてこの発表には妙に微笑ましい気持ちになった。
なんといってもこの文がいい。“世界の平和を願い”“平安に向かいますよう”と、自分たちの幸福は二の次で、まず世界の幸福を願うという、これこそアイドルの理想の形ではないだろうか。
かなり飛躍していることを承知で書くと、堂本と百田は、芸能の原型――神事(しんじ)と関連のある者として、いまここに結ばれたのではではないか、世界の平和を祈るために! と妄想が果てしなく膨らむ。堂本剛は神社仏閣ライブを行っているので、芸能と神事についてはきっと詳しいのではないだろうか。
……などと、誇大ながらも善良な(自分で言うな)夢を見せることこそ、アイドルのお仕事であると思うのだ。そういう意味でも、堂本剛と百田夏菜子は、アイドル同士で結婚することによって、アイドルへの夢を壊すことなく、むしろ、アイドルの力を最大限に発揮したといえるだろう。アイドル婚の革命である。
実のところ、アイドル同士の結婚は少なく、たいてい、女性がアイドルを辞めてから、あるいは辞めるとき、という区切りがあるようだ。堂本、百田ご夫妻には、アイドル同士も結婚できる、祝福されるという、これからのアイドルの形を切り拓いてほしい。
革命的といえば、これだけネットにネガティブワードがないことは珍しい。突然の発表も、アイドル同士であることも、堂本44歳と百田29歳と、年の差がやや離れていることも、まったく問題になっていない。これもひとえに、彼らがこれまで長きにわたってアイドルというエイジレスな任務を完璧に遂行してきたからであろう。
アイドルとはファンに夢を見せる職業のため、とりわけ若いときは恋愛禁止を課せられることもあるという。誰かひとりのものではなく、ファンひとりひとりと良き関係性を築くために、恋人の気配を感じさせないことが鉄則。だが、時々、恋人が発覚して騒動が起きたりする。堂本と百田にはこれまでそれがなく、ファンの夢を壊すことがなかった。
世に出ている記事を読むと、出会いは、KinKi Kidsのテレビ番組での共演で、2016年には堂本が作詞・作曲した楽曲「桃色空」をももクロに提供している。だが、それ以上の関わりを誰も想起することはなかったわけだ。交際期間は短かったと想像する記事もあった。
あまりにも鮮やかで、この結婚報告の舞台裏を知ろうとするのも野暮というかのように、ただただアイドルのふたりが結婚したということだけで良かったねえと祝福する、それすらも夢のひとつのような気がする。
鼻の利く芸能記者たちの目をかいくぐり、ステージ上のマジックのように、早着替えのように、鮮やかに結婚発表を行ったことに、ふたりの芸能人としての、アイドルとしての責任感の強さが伺える。応援してくれている誰もがっかりさせることなく、パーッと場面転換をしてみせた。
アイドルの理想の形であり、アイドル婚の革命
ファンの夢を壊すことがなかった二人の鮮やかな結婚発表
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