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賛否両論の日曜劇場、西島秀俊が体現した”リアリティ“よりも大切なコト

指揮者役の佇まいに必要なもの

『リバーサルオーケストラ』

画像:日本テレビ『リバーサルオーケストラ』公式サイトより

 でも逆に言えば、佇まいがうまくキマらなかったら、これはもうどう演じてもたぶんダメ。『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ、2023年)の田中圭も若きマエストロ役を悠然とした振り方でクールに演じきった。  マエストロつながりでは、『のだめカンタービレ』の竹中直人は、そこはかとなく胡散臭いビジュアルにもかかわらず、外国人マエストロの指揮に妙な説得力をもたせていた。そう、指揮者役、特にマエストロ級の佇まいに必要なものはリアルな説得力なのだ。  ディテールは視聴者の想像力が補足するとして、リアリティが一本線としてなければいけない。それで筆者が今、最も佇まいがあると感じる西島秀俊が、マエストロ指揮者役を演じるというので、これは期待しかなかった。

危なっかしい西島秀俊

 西島秀俊が主演と聞けば、すぐさま申し分ないとも思うのだが、第1話を見るとなかなかに危うげでハラハラさせてくれるではないか。ウィーンの名門楽団で、首席指揮者であるマエストロの代役となったのが、世界的に活躍する日本人指揮者・夏目俊平(西島秀俊)だ。  最初の演目では、西島特有の嬉々とした表情で、あまりにも楽しそうに振っているものだから、『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)の史朗さんをつい思い出した。振り方自体も割とスタンダードで音の頭と一致している。  それが休憩中、娘の響(芦田愛菜)が事故に遭った報せを受けて、気持ちがドンと沈む。次の演目ではどんよりした振り方になる。感情の変化を表現するとはいえ、こんなにはっきりわかりやすく違いをつける振り方はあまり現実的ではない。  指揮者役としてこれは何だか危なっかしいなと思ったものの、いやでもこれもありだなと。そう思わせるだけの佇まいが西島にはやっぱり備わっているのだと思う。
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西島秀俊だから許してしまう
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