俳優たちの体当たり演技は見事であり、スカッとするラストも期待したくなるドラマではあるが、特に注目したいポイントがある。それは
心寧の親権の行方だ。
『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)をはじめ、弁護士系のドラマでは親権に関するエピソードも出てくるが、あくまで10数話ある中の1話で扱われるだけ。
親権を軸に物語が進む作品は珍しく、親権について考える機会を視聴者に与えてくれるかもしれない。

作中で弁護士・財田は、乳幼児期の子どもの親権者には母性を有する者が望ましいとされる「母性優先の原則」が根強い現状を説明。そして「
今の日本の父親の親権獲得率はおよそ1割」という。そのセリフの通り、綾香側に問題があり離婚したとしても、夫が親権を獲得できる確率は低い。だからこそ渉は悪戦苦闘を強いられる。
この母性優先の原則は、男性側がどんな父親かと問わず一律に親権を獲得できる確率を下げ、さらには女性がどんな母親であっても母性を押し付ける、
男女どちらに対しても不公平を与える価値観と言っていい。
子どもに会えない父親たち。“離婚しない男”は渉だけじゃない
また、日本は両親の離婚後に父母のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」、一方フランスやドイツなどは離婚後に父母どちらも親権を持つ「共同親権」となっている。単独親権のために離婚後に子どもに会わせてもらえないと嘆く男性は少なくない。そのため、渉のような“離婚しない男”は一定数いるのではないだろうか。

片方の親が主に離婚を前提に、配偶者の許可を得ることなく子どもを連れて出ていく、いわゆる“子どもの連れ去り問題”というものがある。そういった背景もはじめ単独親権のデメリットが指摘されており、今まさに共同親権導入の議論がされている。