Entertainment

42歳俳優の持つ狂気と、気持ち悪い歌声。映画『カラオケ行こ!』がじわじわ伸びそうな理由

“生活圏にいない大人”と交流する必要性

 漫画ではあまり感じなかったが、映画『カラオケ行こ!』では聡実の学校生活が深く堀り下げられていたからなのか、観終わったとき「社会で子どもを見守ることは重要なのかも」という感想が真っ先に浮かんだ。
映画『カラオケ行こ!』公式ビジュアルブック

「映画『カラオケ行こ!』公式ビジュアルブック」(KADOKAWA)

 終盤に聡実は狂児に部員とのいざこざを見られてしまい、狂児にからかわれてしまう。これまで感情を激しく表出することがなかった聡実だったが、ここへ来てエキサイトして狂児に強い言葉をぶつけた。冷静な聡実がこれだけ取り乱すことができたのは、狂児と信頼関係を築いていたこともあるが、それ以上に狂児が家族や学校とは無関係な人間だったことが大きい。

仲のいい家族や友人には、吐き出せないこともある

 聡実は合唱部部長として大会に臨むも、結果を残せなかった。また自身も声変わりの時期に差し掛かり、今まで通り高い歌声を出すことはできない。いろいろなモヤモヤを抱えている聡実ではあるが、部長という立場もあってか誰かに相談することは難しい様子。家族仲が決して悪いわけではないものの、絶賛反抗期を迎えているために親に相談することもしない。
 狂児という自分の生活圏に無関係な人間にだからこそ、見せられる表情や感情は存在する。とりわけそういった表情や感情は、健全な成長のためにも胸の中に抱えず、吐き出しておかなければいけない。それらを受けて止めてくれる狂児のような人間は必要不可欠なように感じた。  生活圏に無関係であれば誰でも良いわけではないが、狂児という存在が近くにいたことが聡実の成長に大きく影響したことは事実。“ご近所付き合いの希薄化”が叫ばれて久しいが、「近所の人とすれ違う時には挨拶くらいはしようかな」と思わせる映画でもあった。 <文/望月悠木> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ