田代は「こういう時代だから褒める時も言葉選ばないとね」と諭すが、ハラスメントをしていた自覚がなかった秋津は動揺を見せる。
そんな中、隣の席にいた市郎が突如「どういう時代?」と会話に割って入ると、田代は「多様性の時代です」とお手本通りの回答。しかし、市郎は「
『頑張れ』って言われて会社休んじゃう部下が同情されてさ、『頑張れ』って言った彼が責められるって何か間違ってないかい?」「だったら彼は何て言えば良かったの?」と止まらない。
これに田代は「
何も言わなきゃ良かったんです」「ミスしても決して責めない。寄り添って一緒に原因を考えてあげれば彼女の心は折れなかった」と“ベストアンサー”を口にするが、市郎は「気持ち悪」と一蹴。「『頑張れ』って言われたくらいでくじけちゃうようじゃ、どっちみち続かねえよ」と続けると、田代は「そういう発言が今一番まずいの」と声を荒げる。
しかし、市郎から「『
そういう発言が今一番まずいの』ってヒステリックに叫んで話終わらせるのはいいの? 何ハラだかにはなんないの?」と言い返されると、「ハラスメント」や「時代」という言葉を盾に言葉を並べてきた田代たちは、逆にその盾を向けられためにそれ以上は反論できずに口を噤むしかなかった。
田代と鹿島は居心地が悪くなりその場を去ろうとするが、
秋津は「話し合いましょう、たとえわかりあえなくても」と歌い出す。居酒屋は急にミュージカルステージとなり、秋津は話し合うことの必要性、さらに田代は組織に期待せずに心を殺して働いている現在の心境を歌に乗せて吐露。“開演”した時は困惑していた市郎だったが「
我慢しなくたっていいだろ、『幸せだ』って言いづらい社会、なんかおかしくないかい?」と歌い、「『幸せだ』って叫ぶ俺の価値観も認めてくれよ」と訴える。
ひとしきり歌って満足した秋津は「話してもラチがあかないんだから歌ってもダメですよね」と急に絶望感をポツリ。すると“パワハラ被害者”の加賀が登場。彼女も歌に乗せながら、秋津から優しい言葉ばかりをかけられ、叱ってもらえなかったことが苦しかったと話す。それを聞いた秋津は「それは言ってくれないとわからない」と言って笑顔を浮かべ、「話し合えて良かった」と本音をぶつけ合えたことに満足する様子だった。
根性論で上から従わせる昭和、過剰な配慮が求められて腫れ物に触るように接しなければいけない令和。
どちらが正しいか間違っているかではなく、結局はいつの時代も話し合わなければいけない。市郎が田代を論破するような展開になったが、ただただ田代を言い負かして終わりにするのではなく、何が人付き合いで大切なのかを示す内容で見ていて気持ち良かった。また、ミュージカルの中で言いたいことを主張するため、説教くさくなくなかった点もさすがの一言。
市郎がこれからどのように令和の問題点を浮き彫りにして、生きやすい社会を築くためのヒントを示していくのか期待したい。
<文/望月悠木>
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フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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