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『ブギウギ』愛助さん死す。演じる水上恒司は改名でゼロからリスタート、2年で再起できた理由は?

改名しても変わらない本質・まっすぐさが見る者の心を打つ

せっかく、岡田健史として認知度を積み上げてきたのに、名前が変わってしまうと、一般的知名度はゼロからリスタートになる。でも、水上はこの2年の間に着々と「岡田健史」から「水上恒司」に認識を塗り替えていった。まるで、不死鳥のような俳優である。
名前は、他者に認識してもらうためにとても大事な要素。だが、たとえ名前を失っても、あるいは、名前が変わっても、その人の本質が変わらなければ、必ず、また見つけてもらえる。水上恒司はそれを示したのだ。 水上恒司の本質とは何か。教師との恋を貫いても、幕末の志士として戦っても、特攻隊としてその生命を捧げても、スター歌手を熱心に推しても、どんな役でもとにかく真摯で純粋で、そのまっすぐさが見る者の心を打つ。

体が衰えていく役や難役に取り組む真面目さ

野球部出身のスポーツマン的な人物である水上は、ひたむきな役にハマる。素顔も「真面目過ぎてつまらない、と言われる」と、2023年暮れ、『トークィーンズ』(フジテレビ系)に出演したとき、語っていた。 真面目な部分は、真面目に推し活動する愛助にぴったりであったが、あまりにも心身が丈夫そうなので、体の弱い愛助役は合わないのでは? という疑問もあったが……。 実際、結核で長患いしている文化系な人物という設定にしては、ガタイが良すぎることは否(いな)めなかった。だが彼は、愛助が健康な頃から亡くなるまでの期間が、順撮りでもないにもかかわらず、いろいろ工夫して、次第に体が衰えていく役を切々と演じきった。 水上が岡田健史であった頃、日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した作品に『望み』(20年/堤幸彦監督)がある。このとき、筆者はオフィシャルライターとして現場の取材をしていたのだが、彼はやはり実に誠実に取り組んでいて、感心したものだ。
『望み Blu-ray豪華版』KADOKAWA / 角川書店

『望み Blu-ray豪華版』KADOKAWA / 角川書店

ネタバレになるので詳細は伏せるが、おいそれとネタバレできないほど、展開に重大に関係してくる難しい役で、それを演じるうえで、ひじょうに真面目にある状況を演じることに向き合っていた。パンフレットのインタビューでの口調に、とことん真面目な人なのだと、そのとき感じた。
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名前を一度失いながら再起した水上恒司は、喪失の時代の「希望」
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