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NHK大河『光る君へ』の平安のモテ男役に33歳のLDH俳優が抜擢されたワケ。容姿だけではない資質とは

町田啓太扮する公任最強説

 あるいは、公任を筆頭に、道長、藤原斉信(金田哲)、藤原行成(渡辺大知)のイケメン4人衆がまるで、“平安のF4”という見方まで成立してしまっている。  歴史絵巻がこうして現代の視聴者によって自由に読み解かれ、解釈されることは興味深い。  公任の初登場は、第3回。道長と斉信が囲碁を打つ傍ら、床に左手をついてゆるりとしているのが公任。なんという余裕。まるでこの寝殿造りの室内が町田の左手にフィットするように設計されているのかしら。  そんな感じだから、女子からの恋文を読んで、「歌はうまいが、顔がまずい」と平然と言ってのける。  この公任役に導かれながら、さらなる妄想が豊かに広がる。公任と町田、両者のファンである筆者は、町田扮する公任こそが、大河ドラマ史上最強なのだという説を唱えたくなった。  よし、勢いづいた。こうなればチャンス到来。今こそ、一矢報いることができようぞ。さまざまな和歌集で名歌が紹介されている公任だが、例えば、『新古今和歌集』に収められたこの一首はどうだろう?

公任がモテる秘密

「ほどもなく覚めぬる夢のうちなれどそのよに似たる花の色かな」  これは藤原兼家(段田安則)の策略で、在位2年の短期政権に終わった花山天皇(本郷奏多)のことを歌った一首。まるで夢のような政権だったけれど……と、その治世と天皇に対する同情を込めている。  人の心を叙情的に表現する公任がもし作詞家だったならこの令和でもきっとミリオンヒットを飛ばすに違いない。公任が編纂した『和漢朗詠集』はさながらベストヒット歌謡アルバムみたいな感じか。しかも公任、作詞ばかりか管弦の才にも優れた楽器奏者だった。  当時は、漢詩(からうた)をリズムに合わせて歌う朗詠が、歌謡として流行っていた。この朗詠の音楽的感覚が公任の和歌に流れ、それが何よりモテる秘密。広く人々の琴線にふれる公任の歌に共感した多くの女性たちが、こぞって恋文をしたためたのだ。
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『光る町田君へ』と改題
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