秋元康・鈴木おさむ・福田雄一 バラエティー感覚の企画力で勝負の三大作家
ところで、鈴木おさむと秋元康のドラマをごっちゃにしている人はいないだろうか。
秋元康はAKB48や坂道シリーズなどをプロデュースして作詞家でもあり、ドラマの企画などもたくさん行っていて、昨今のヒットドラマは考察に特化した『あなたの番です』『真犯人フラグ』(ともに日本テレビ)などがある。
鈴木おさむはバラエティーの構成作家やドラマの脚本を書いていて、バラエティーでは『スマスマ(SMAP×SMAP)』(フジテレビ)が代表作で、昨今のヒットドラマは『奪い愛、冬』『M愛すべき人がいて』(ともにテレビ朝日)などがある。演者の熱量を引き出す作品が多い。

『M 愛すべき人がいて』エイベックス・ピクチャーズ
ついでにいうと『勇者ヨシヒコシリーズ』(テレビ東京)や『今日から俺は!!』(日本テレビ)や映画『銀魂』の福田雄一は小劇場出身の放送作家で、脚本も書き、監督もやる人物である。構造の裏側を明かすメタ的な作品を得意としている。
それぞれ違いはあるが、どれもストーリー性は二の次で、バラエティー感覚の企画力で勝負する作品を得意とする三大作家、それが秋元康、鈴木おさむ、福田雄一(50音順)である。そのなかで、鈴木おさむが放送作家、脚本家を引退すると宣言した。
まだ51歳。秋元康が65歳、福田雄一が55歳と思うと、引退は早い気がするが、50代でもう1回チャレンジしたいという思いがあるそうで、放送作家や脚本家をやめても、小説家やプロデューサーなどとしていくらでも活動し続けることが可能であろう。それこそ、秋元康のように、企画者として、脚本や演出を才能ある若手に任せるということもありそうだ。

『奪い愛、冬』TCエンタテインメント
鈴木の放送作家、脚本家としての引退作が『離婚しない男』なのだが、『奪い愛、冬』『先生を消す方程式。』(ともにテレビ朝日)など、これまで彼が手掛けたぶっ飛んだドラマはみなオリジナルだった。
が、今回はなぜか漫画原作もの。最後なんだからとことんオリジナルをやってほしかったが、あえての原作ものというところがまた切れ者の鈴木の策なのかもしれない。あるいは、これが2024年現在の地上波の限界ということなのかもしれない。
原作(大竹玲二作)をざっと読んでみると、夫が妻に浮気され、親権をとって離婚するというベースは同じで、夫のキャラがドラマのほうが不憫(ふびん)な感じになっていて、浮気のディテールのバカバカしいエロさにオリジナリティをかなり付加している印象である。

大竹玲二『離婚しない男(1) (ヤンマガKCスペシャル)』講談社
原作は絵の主線が力強く、ディテールの書き込みが細かく、画面が黒っぽく感じる青年漫画調で、エロの描写が生々しいが、ドラマでは、昨今のコンプライアンスの事情であろうか、俳優の身体の露出は極力抑えめで、その分、バカバカしいほどの描写で笑いに持っていく。
猫の首輪プレイとかチェリーとか小道具で想像力を刺激する。生々しい行為そのものではなく、喜劇の演技だと思えば、篠田麻里子も小池徹平も藤原紀香も真顔でやれるのかもしれない。

『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』4話より© テレビ朝日