――相手に嫌だと伝えづらい場合はどうしたらいいのでしょうか?
周りが行動することもできます。臨床心理士のみたらし加奈さんが副理事を勤めているNPO法人 「mimosa」の「誰でもできる5つの行動『5D』」が実践的です。
そこには、セクハラに直面した場合の行動として、「Distract(注意を逸らす)」「Delegate(依頼)」「Document(証拠を取る)」「Delay(後で)」「Direct(指導する)」の5つの行動が紹介されています。
――加害者にならないためにできることはありますか?
同じような出来事を繰り返さないためにも、加害した側をバッシングして終わりではなく、問題が起きた背景や状況、それを防ぐためや再発しないためにできることなどを考える必要があります。
誰もがマジョリティ・マイノリティ性を持っているという点で、例えば、男性であることで社会的に優位な立場に置かれていることを認識するなど、特定の属性を理解するだけでも社会は徐々に変わると思います。
――性教育が不十分である中で、大人はどのようなスタンスで教育現場や子育てに携わるべきでしょうか?
一番大切なのは、行動に移すことだと考えます。過去には男の子が女の子のスカートをめくると、その子が好きだからといった形で問題が片付けられてしまう時代もありました。今では問題視されるようになりましたが、それでも教育現場にいる先生方の多くは性教育を受けていないだけでなく、性教育をするための研修を受けていない場合も多いです。
このような現状に対処するためには、政府や自治体が関与することは欠かせません。そのためには、市民が声を上げることが求められます。需要があれば政治も動くと思うので、選挙に行く、PTAで性教育を議題に挙げるなど、身近なことからやっていくのがいいのかなと。
――さまざまな性被害のニュースを見て心を痛めている方もいると思います。最後に、読者にメッセージをもらえますか?
こういった事件で心を痛めている方がいれば、まずはご自身のメンタルのケアをして欲しいです。次に、このような事件を繰り返さないためにも、今後は大人が自分の家族や子どもたちに性教育の重要性をしっかりと伝えていかなければなりません。これから社会がどのような方向に進展するかはわかりませんが、今できることとして周りに仲間を見つけることも有効です。
例えば、学校で子どもや教師による性被害・加害が起きたとき、保護者たちが共感し合える人たちと連帯することで、学校に声が届くかもしれません。今はネットもあるので、同じ価値観や悩みを持った人たちがつながりやすい環境もあります。仲間たちとコミュニケーションを取ることで、何らかの変化が生まれると信じています。
<取材・文/Honoka Yamasaki>