いまや不倫男役が話題だが…10年前に監督が目撃していた39歳俳優の“たのもしい姿”「共闘できると思った」
“青春映画といえば”の古厩智之監督にかかるとどんな若手俳優も活気づいてきらめく。長澤まさみ初主演作『ロボコン』(2003年)でも高専の学生を主人公に、ロボットコンテストの熱気を画面からふるわせた。
2024年3月8日から全国公開されている映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』(以下、『PLAY!』)では、徳島の高専に通う少年たちが、eスポーツ全国高校生大会に挑む奮闘を描く。単なる自転車の走行でさえマジカルな一瞬として映ってしまう不思議……。
イケメン研究をライフワークとする“イケメンサーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、大学時代の恩師でもある古厩智之監督に前編・中編・後編のロングインタビューを行った。
【前編を読む】⇒「素晴らしい才能」「見つめたくなる魅力」青春映画の名匠が絶賛する20代俳優とは
中編では、小池徹平主演映画『ホームレス中学生』(2008年)の撮影秘話など、作品を越えて俳優たちが共振するかのような“古厩マルチバース”を読み解く。
――古厩監督は、これまで10代の青春をライフワーク的に繰り返し描いてきました。佐野岳さん主演の『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』(2013年)では、主人公のキャラ設定で苦労し、自分に引き寄せて考えたそうですね。当時40代だった監督フィルターを通じた10代だったわけですが、『PLAY!』ではどうでしたか?
古厩智之監督(以下、古厩):主人公となるティーンの気持ちを考えることは毎回難しいところです。例えば、奥平(大兼)くんが演じている郡司翔太は過酷な家庭環境ですよね。
でも僕はこんなに厳しい家庭環境で育っていないし、現代にある貧しさをほんとうの意味では知らない。それでもわかりたいと思う。自分が理解できないことは脚本として書けませんから。
奥平くんと鈴鹿(央士)くんともディスカッションしました。題材について自分で納得がいった段階で、あとは二人の演技に委ねました。
――奥平さんと鈴鹿さんはすでにめざましい活躍ですが、古厩作品をきっかけに若手俳優がその後目覚ましいキャリアを重ねていく姿を見ていてどんなことを感じますか?
古厩:みんな僕を通過点としてビッグになっていく(笑)。それは冗談としても、その後の活躍を見ていると、みなさん、いい現場や監督と巡り合っているなと思います。
――若手俳優を送り出すとき、彼らからどんなことをキャッチしているのか。演出の秘訣を教えてください。
古厩:まず大前提として撮影が一番楽しいものです。撮影はライブです。脚本段階では、作品全体の7割くらいしか書けないものであった方がいい。
撮影をともにする俳優さんから残りの3割をもらうことにしています。僕は俳優に対して演出を施すというより、「いいところはどこだろう?」、「もらえるところはどこだろう?」と探ることを心がけています。
例えば、翔太は優しいけれど、とても受け身のキャラクターです。それは今っぽい若者の特徴だなと思いました。その受け身のキャラクター性自体は奥平君が見つけたもの。僕はそれを感じて、いいところとしてもらいます。
――『のぼる小寺さん』(2020年)の伊藤健太郎さんも受け身の人で、終始、工藤遥さんを眼差す側でしたよね。
古厩:そうでしたね。
「みんな僕を通過点としてビッグになっていく(笑)」
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